■消えていく名物リポーター
一方で、芸能人自体の変化も大きい。SNSが一般化し、多くのタレントが自分のアカウントで情報を発信できるようになった。芸能人が自らプライベートをSNSでさらけ出すことに加え、報道やスキャンダルに対してSNSで謝罪、反論することも珍しくない。こうした風潮のなか、芸能リポーターという第三者の口から語られる情報の価値は相対的に下がったという側面もある。
果たして芸能リポーターなる職業は、その役割を終えて絶滅してしまうのか。週刊誌の芸能担当記者はこう予測する。
「彼らの仕事は、テレビ番組でコメントするだけではありません。芸能プロとつながっていることで、週刊誌やスポーツ紙にオフレコ情報を流すこともあります。さらに地方のローカル番組では、今も“中央の芸能情報”は根強い需要があるので、しばらくはそちらでの仕事はあるでしょう。ただ、若手の芸能リポーターという人はほぼいません。かつては週刊誌やスポーツ紙の芸能担当記者から転身するケースがありましたが、顔を出してテレビで芸能人の内部情報を語るのは批判されるリスクも大きく、あえてやりたいという人はほとんどいないのが現状です」
事実、井上公造氏より下の世代で芸能リポーターを自ら名乗っている人は見当たらない。
「前田忠明さんや東海林のり子さんは、80歳を超えても“ご意見番”としてたまに登場しますが、第一線からは退いて久しい。梨元勝さんをはじめ、須藤甚一郎さん、鬼沢慶一さんなど有名芸能リポーターも相次いで鬼籍に入りました。40代以下の世代にとっては、もはや“昭和の芸能界の昔話をする人”という存在になっています。芸能人をめぐる取材環境も刻々と変わるなか、彼らのような芸能リポーターはもう出てくることはないでしょう」
TVウオッチャーの中村裕一氏は、芸能リポーターの存在意義をこう分析する。
「やはりSNSの影響は非常に大きいと思います。芸能人本人や事務所がTwitterやインスタグラム、YouTubeで自由に宣伝し、自分の意見を発信できるようになったことで、橋渡し役をしていた芸能リポーターの存在意義は著しく薄れてしまいました。しかし、ウソかホントか分からない、都市伝説のような話が存在するのも芸能界の魅力の一つでもあったはず。テクノロジーの発達で便利にはなりましたが、人と人が直接対峙することに生じる感情の機微や駆け引きの妙味がごっそり失われてしまったことは残念にも思います。芸能リポーターの方々には、逆にSNSの発信力を存分に駆使し、貴重な昭和の芸能史の語り部として、まだ誰も聞いたことのないエピソードや、見たことのない芸能人の素顔を末永く語り継いでもらいたいですね」
冒頭で紹介したインタビューで井上公造氏が述べた「コネクター」という仕事は、まさに地方と芸能界、そしてマスメディアをつなぐ仕事だと説明している。井上氏は、自分自身で芸能リポーターという仕事の“次のカタチ”を示そうとしているのかもしれない。(黒崎さとし)