
しかし国軍に反発する多くの市民は、家から出ない作戦にでた。民主派の軍事組織である国民防衛隊(PDF)もステージの爆破を予告した。
国軍は一部の公務員に動員をかけ、買収した市民をコンサート会場に集め、やらせの水かけ祭りも。それを国営テレビが撮影した。ヤンゴンの道路はひっそりしていたが。何カ所かのステージは爆破された。
その後、ミャンマー西部のラカイン州から一つの動画が送られてきた。ミャンマーの少数民族、ラカイン族が暮らす一帯だ。
多くの若者が集まったコンサートだ。踊る観客には水がかけられ、クーデター前の水かけ祭りのコンサート光景だった。日本の飲食店で働くラカイン族の男性Rさん(49)はこう説明してくれた。
「コンサートはラカイン州のミャウーという街の近く。バングラデシュとの国境に近い街です。ミャンマーはいま国軍の空爆や弾圧が激しいけど、ラカイン州は地元の軍隊と国軍の力が拮抗(きっこう)していて治安が保たれている。水かけ祭りをやりたい若者が企画して、ヤンゴンからたくさんの若者が集まったみたい。車やトラックの荷台に乗って数時間かけてね」
ミャンマーのなかには、国民防衛隊に入り、いまも国軍と闘っている若者もいるというのに……という意見もあるようだが。
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。