昼間の頻尿では、遠出や旅行ができない、人と会食していてもトイレのことばかり心配しているなどで、活動を制限してしまうことになる。トイレの回数を減らそうと、ついつい水分摂取を控えてしまい、特に夏には脱水症の危険が高くなる。

 夜間頻尿の場合は、何度も睡眠をさまたげられるため、睡眠の質が低下し、疲れが取れない、頭がすっきりしない、昼間でも眠いなどの状態に陥りやすくなる。

 さらに気をつけたいのは、夜トイレに起きたときは転倒リスクが高いことだ。うす暗い中で、すぐにはからだが動きにくい状態でトイレに急ぐことにより、転倒し、大腿骨頸部骨折や頭部外傷を起こしやすくなる。夜間の排尿が2回以上の高齢者は、1回以下の高齢者に比べて転倒による骨折リスクが2倍以上になるという調査報告もある。

 夜間頻尿では、高血圧や糖尿病、心不全、慢性腎臓病などの存在が指摘されるケースも多い。これらの全身疾患の一症状としてとらえることもできるため、放置することは避けたい。

 桜十字病院泌尿器科医長の吉田正貴医師は、こう話す。

「頻尿や夜間頻尿は、確かに高齢になると増えてきます。しかし、男性なら前立腺肥大症、女性なら過活動膀胱など、原因となる病気があることが多く、適切な治療を受ければ改善できるものがほとんどです。『年だから仕方がない』と考えるのではなく、生活に支障が出るようになったら、かかりつけ医に相談することをおすすめします」

(文・別所 文)

※週刊朝日2022年5月20日号より

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