同じ旅行で、こんな経験もした。ライドシェアでたまたま出会ったアフリカ系と思われる運転手は、アメリカに来て間もない移民だった。この車を「ウーバー」で呼び出した知人のアカウントの名前が「HIRO」だったのだが、乗車するや否や、日本人か?と聞かれた。

 最近は中国人の方が多いのに、どうして日本人だとわかったのかと聞くと、「HIRO」は「HIROHITO」のHIROだから日本人だと思ったという。

 HIROHITOを知っているのかと言ったら、「当たり前だ。戦争を始めたEMPERORだ」との返事。もちろん、彼には何の悪意もない。単に客観的事実を述べただけで、その後は、日本人は礼儀正しくて好きだとか、日本に是非行ってみたいという友好的な会話が続いた。

 今回のような動画に本気で目くじらを立て、上から目線で、「間違いを正せ!」というような態度をとるのは適切ではない。そうした態度は、世界からの「日本は過去に目を閉ざそうとしているのではないか?」という疑いを誘発する。

 過去の間違いは間違いとして冷静に認め、謝罪の気持ちを素直に表す。その上で、過去の教訓を生かし平和への道を歩んでいるということを丁寧に説明する態度。それこそ、真の平和主義国家の姿なのではないか。


週刊朝日  2022年5月20日号より

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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