ウクライナの公式とされるTwitterアカウントが、動画で「ファシズム」「ナチズム」に触れる際に、ヒトラー、ムッソリーニと並んで昭和天皇の写真を掲載したことが物議を醸した。ネット上で日本人から抗議の声が上がり、日本政府も抗議する騒ぎになった。同アカウントが写真を削除し、「心からおわび申し上げる」と謝罪したことで事は収まったようだ。
ただ、私はこの事件をめぐる報道を見ていて、非常に心配になった。
それは、多くの日本人が、過去の日本の戦争責任を完全に忘れたのではないかという印象を受けたからだ。マスコミも、単純にウクライナ側の一方的な間違いだというトーンで報道していた。
そもそも、昭和天皇の戦争責任を追及するのと現在の日本政府や日本国民を批判するのとは全く異なる。ヒトラーを批判したからドイツ人を侮辱したということにはならないのと同じことだ。
昭和天皇は、戦後一貫して日本の平和主義の象徴的存在だった。それは平成の天皇に引き継がれ、日本が平和ブランドを確立するうえで、天皇家は最大の功労者であり、それを誇りに思う日本人の気持ちは理解できる。
だが一方で、昭和天皇の太平洋戦争に関する戦争責任を問う考え方が今も世界に広く残っているのも事実だ。日本人が忘れたくても消すことは出来ない。それは世界を旅すればよくわかる。
例えば、数年前に訪れたボストン美術館でのこと。戦争をテーマにした展示コーナーがあり、ヒトラー、ムッソリーニと並んで昭和天皇を悪者として描くイラストが当たり前のように展示されていた。私は不意を突かれた思いだったが、日本の一番の友好国だと思っている国でも、客観的な歴史上の事実としては、そういう扱いになるのだ。
時間が経てばこの不名誉な記憶も消えそうに思うが、美術館の展示で世界中の人に今もなお拡散され続けていることは、日本人も覚えておいた方が良いだろう。