背景には、深刻な人材不足の影響もある。同社の調査(2021年度上半期中途採用動向調査)によれば、コロナ禍においても人材不足は解消しておらず、中途採用計画を満たせない企業の割合は8割にも上る。また、航空会社が地域創生事業に乗り出したり、自動車製造業の自動運転開発が本格化するなど、既存事業から新領域に手を広げる企業も増加。こうしたビジネスモデルの変化から企業が求めるスキルにも変化が起きており、企業側もこれまでの会社にはいなかった“異能人材”を求めているのだ。
実際に、「ここ2年ほどで、人材要件を大きく変えました」とは、地方に本社機能がある製造業の人事担当者だ。いわく、これまでは「会社のやり方や社風に馴染んでくれる人」というのが優先事項の中にあったが、新事業に乗り出すにあたり、むしろ同業種や同職種にはない発想を持つ人材を求めているという。同社に最近入社したのは、SNSマーケティングに詳しい職歴の30代で、「商品開発にSNSを生かす」というこれまで同社にはなかった発想を買った採用だ。
「コロナ禍で、面接などの選考もオンライン化が進み、地方の会社にとっては追い風な面もある。今後は、これまでにないスキルを持った人材を積極的に採用していきたい」(製造業の人事担当者)
また転職において、年齢による壁も取り払われている傾向にある。以前の中途採用市場では、35歳以上の転職は難しいとされる向きが強かった。しかし今は、40~50代での転職も少なくなく、「50代で越境転職を実現させる人も珍しくない」(前出の藤井さん)という。
「今は、むしろ年齢を重ねたからこその力が評価される時代。特にマネジメント経験があれば多くの選択肢が広がります」(同)
ただし、年齢や経験を重ねたからこそ、従来のやり方にとらわれるのではなく、変化に対して柔軟である姿勢が求められる。実際に、多くの企業が選考の中で重視しているのが、「環境変化への対応の仕方」(同)。特に現在のように変化が激しい時代では、変化を柔軟に受け入れる姿勢がますます求められる傾向にある。前出のAさんのように、“年下上司”の意見にも謙虚に耳を傾けたり、これまでのやり方に固執しないなどの姿勢が必要だ。