今最も注目される作家・櫛木理宇の傑作小説『死刑にいたる病』を映画化したのは、「凶悪」「彼女がその名を知らない鳥たち」、数々の映画賞に輝いた「孤狼の血」の白石和彌監督。出演はほかに雅也の母親役に中山美穂など。
理想とは程遠いランクの大学に通い、鬱屈した日々を送る筧井雅也(岡田健史)の元にある日届いた一通の手紙。それは日本犯罪史上類をみない数の若者を殺し、世間を震撼させた希代の連続殺人事件の犯人・榛村大和(阿部サダヲ)からのものだった。24件の殺人容疑で逮捕され、そのうちの9件の事件で立件・起訴、死刑判決を受けた榛村は、犯行を行っていた当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり中学生だった雅也もよく店に通っていた。手紙の内容は、「罪は認めるが、9件目の事件は冤罪だ。犯人は他にいることを証明してほしい」。
榛村の願いを聞き入れ、雅也は事件を独自に調べ始める。そこには想像を超える残酷な真相があった──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
狂気の殺人鬼を表情ひとつ動かさずに演じる阿部サダヲのうまさが事件の気色の悪さをあおる。凝った仕立ての心理サスペンス劇で、殺人鬼が、これだけは冤罪と主張する殺人の真犯人捜しを依頼する青年との関係がスリル。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
その人心掌握術によって拘置所の刑務官すら心を許してしまう連続殺人鬼。面会室のガラスで隔てられた主人公たちの距離感が目まぐるしく変化する展開に引き込まれ、蜘蛛の巣にからめとられるような状況に背筋が寒くなる。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
キャスト、タイトルを出すタイミング、水面の花びらとその正体、面会シーンでガラスに重なるふたりの顔。更にソフトで奇妙な阿部サダヲと感情が揺れ動く岡田健史の演技。なにも言うことがない。終わってしばらく呆然。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★
俳優陣の演技は素晴らしく、カメラワークや美術などのルックも良くて日本映画の中で高いクオリティーの力作だが、英語圏や韓国の既存のサイコスリラーを観ている者にとっては勿体ない内容。最後が台無しで星一つ減。
※週刊朝日 2022年5月20日号