今村:やってないですね。ただ、皆さんに読んでもらう機会が増えれば増えるほど下手は打てないなと思うから、自分でできる自信があっても、いろんな人の力を借りたいなと思っています。
林:作家って、きちんと計算しながら書いていく人と、どんどんのめり込んで、手が勝手に動いていく人がいるけど、今村さんはどっちのほうですか。
今村:僕はプロットを立てるのが苦手で、たとえば『塞王の楯』やったら、「人はなぜ戦うのか」というテーマをザクッと決めて書き進めていったんです。でも、そうしていたら最近は長くなる傾向があったので、直木賞をいただいてからは自分で戒めて、決めた枚数にきちっとできるように意識して書いてますね。
林:私は中世とか幕末・明治は好きで書きますけど、戦国時代がわかりづらくて苦手なんです。今村さんはなんで戦国を好んでお書きになるんですか。
今村:僕、決して戦国と決めて書いてるわけではないんですけど、こういうのを書きたいと思ったときに、表現しやすいのは戦国時代が多いですね。それと、資料が幕末になると残りすぎていて、フィクションをはさみづらくなったりしますけど、中世になると逆にわからないことだらけだし、戦国ぐらいが僕にとってはちょうどいいあんばいなんでしょうね。
林:すごい戦国オタクという感じがしますけど、子どものころから本をいろいろ読んでたんですか。
今村:読んでましたね。小学校2、3年ぐらいから、事典が好きで文字が読めなくても絵だけ見てましたし、小説としては小学校5年生のときに池波正太郎先生の『真田太平記』を読んで、そこから司馬遼太郎先生とか、歴史小説をメインに読んできました。あと、芥川賞、直木賞受賞作だけは買うみたいな、一般的な読者という感じでしたね。
林:「オール讀物」と「小説新潮」を定期購読してたそうですけど、それは何歳のときからですか。
今村:小学校5年ぐらいから。
林:えっ、そんな子ども見たことない(笑)。
今村:だから、地元の小さい本屋さんも、僕のことを覚えてるみたいなんです。「変わった子どもや」いうことで。
林:その書店まだあるんですか。