がんの3大療法の一つである薬物療法は、さまざまな新薬が登場し近年急速に進歩している。なかでも最近注目されているのが「がんゲノム医療」だ。好評発売中の週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』から「がん薬物療法」の解説記事を一部抜粋して紹介する。
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がんの薬物療法はより効果が期待できる薬を選択して使う「個別化医療」の時代に入った。国立がん研究センター中央病院の米盛勧医師はこう説明する。
「ここ数年でがんの分子生物学的な研究が進み、共通した遺伝子変異やメカニズムが次々に解明されてきました。肺がんなら肺がんの薬、胃がんなら胃がんの薬という治療法だけでなく、臓器がちがっても『Xという遺伝子に変異があるがんには、xという分子標的薬が効く』など、カギとカギ穴のような組み合わせの治療ができるようになったのです」
このように遺伝子変異を明らかにして、それに基づいて治療する治療方法を「がんゲノム医療」と呼ぶ。
■100以上の遺伝子を解析「がん遺伝子パネル検査」
遺伝子変異などを調べるための検査方法にも変化が起きている。標準治療として全国で広く実施されている遺伝子検査は、検査キットを使って遺伝子を一つずつ検査していくものだった。しかし検査機器の技術的な革新によって100を超える遺伝子を一度に解析できるようになったのだ。
これを「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)」と言い、2019年に保険適用になった。
パネル検査を保険で受けられるのは、標準治療を終了した患者など対象が限られている。保険で検査が受けられる病院も、厚生労働省が指定するがんゲノム医療中核拠点病院(12施設)とがんゲノム医療拠点病院(33施設)、それらの病院とひもづくがんゲノム連携病院(184施設)の計229施設。
検査そのものは外部の検査会社に委託するので、病院によって検査方法などに違いが出ることはない。重要なのは、その検査結果をどのように治療に結びつけていくかという点だ。