大ヒットドラマ「あなたの番です」のストーカー役で注目を集め、映画やCMでも活躍中の奈緒さん。4作目の出演となる舞台はサルトルの翻訳劇。「自由とは何か?」を自らに問う。
【写真】蒼井優だと勘違いする人続出!?「あな番」出演当時の奈緒さん
>>前編「奈緒「いちばん影響を受けるのは役柄」 芝居の世界にどっぷりはまる」より続く
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ドラマ、映画、CMなど、映像の仕事に引っ張りだこの彼女が、2019年から、年に1本のペースで取り組んでいるのが舞台だ。実存主義を牽引した20世紀最大の哲学者ジャン=ポール・サルトルが1946年に発表した戯曲「恭(うやうや)しき娼婦」。栗山民也さんが演出するこの舞台で彼女は、アメリカ南部で、冤罪を被せられた黒人青年をかくまう娼婦リズィーを演じる。
「演じることは、自分の未熟さと対面することでもあります。自分がこの役を演じられるのか、栗山さんの演出の意図を汲み取れるのか。お話をいただいたときは不安だらけでしたが、台本を読んでみたら、いつの時代にも通じるような、人間として向き合わなければならない大切なことが描かれていて、リズィーとして生きてみたい気持ちが芽生えました」
奈緒さんが栗山演出で最初に観た舞台が、蒼井優さんと生瀬勝久さんの共演が話題になった「アンチゴーヌ」(18年)。「古代ギリシャをテーマにした悲劇なんて自分にわかるんだろうか?」と恐る恐る足を運んでみると、新国立劇場小劇場の十字の形に切り取られた舞台に、まず衝撃を受けた。
「シンプルで洗練された舞台の上を人の感情がぶつかって、空気がグイグイと動いていく。『何て美しいんだろう』と、五感を通して、言葉にならない感動を覚えたし、身体の中をビリビリと走るものがありました。まだ挑戦したことがなかった舞台に憧れを抱きましたね」
栗山演出の舞台には、自分の正義を持って、世の不条理と戦っていく女性がたびたび登場する。蒼井優さんが演じたアンチゴーヌも、奈緒さんが演じるリズィーも、世の中のルールではなく、自分の信念に則って行動するところは共通している。