大宮:みんな小沢さんの音楽も好きだけど、その哲学的な部分にひかれていたから、朗読もがっぷり四つで向き合うんでしょうね。
小沢:なんか変な話ですけど、それこそ、僕は東大文IIIそのまんまです。今もそうですけど、僕はかなり綿密に歌詞を書くので、そういう根気の良さとか、仕掛けっていうか。ここでこう言ってたことが、ここでこうなるみたいな書き方は。あと、哲学っぽいこと、歴史の上に立って考えたこと、教養学部っぽいことを歌詞に入れたくなるんです。
大宮:なんで東大を受けたんですか。
小沢:うん……いや、あんまり深くは考えてないかな。東大に入るのに必要なのは受験でしょ。でも受験に受かるのは小さな特技だよね。人間に100億通りくらいの属性があるなかで、記憶力がいい特技のある人の集まりっていうだけ。
大宮:うんうん。
小沢:大学のブランドとか大学名で云々、というやつは、あれは何にも意味がないんだなっていうことが、東大に入ると一番わかった。
大宮:入ってそう思いましたか。それとも社会に出てからですか。
小沢:入っているときかな。当時、ロック雑誌の撮影を中断してさ、「これから大学で授業なんで」って抜けるときとかすごい冷やかされた。だけども、実際には東大生とか東大教官の世間的なイメージなんて虚像で、大学に行けばみんなが普通に暮らしている。だから人に対する変な偏見もなくなって。
大宮:普通だという側面もあるけど、いい出会いもあるじゃないですか。
小沢:それはある。だから、今も感謝しているし、それこそ、大宮さんがふたり同窓会やりたい、みたいな気持ちもわかる。
※AERA 2022年5月16日号