「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
【写真】日本漢字能力検定協会が昨年12月に発表した今年の漢字はこちら
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ローソンでは毎年、新入社員の皆さんに自分を漢字1字で表すアンケートをしています。今年は定期入社として89人の仲間を新たに迎えましたが、驚いたことにほとんど同じ漢字は出てきませんでした。
魅力的な字がたくさんありましたが、まず目を引いたのは「葱」です。
どうしてこの字を選んだのかというと、「癖が強くて個性的だが、周りの食材(人)を引き立てることが多い」といわれるからだそうです。「隠」と書いた人もいました。「隠しているわけではないが、見た目とは反して負けず嫌いな一面がある」とのこと。「欒」を採った人は「高い木のような存在であると同時に、『団欒』という人と集まって和やかに過ごせるイメージがある」といいます。
若いのに深く自分を分析しているなと、感心しました。正直、同じ会社に就職した同世代の人たちなので、みんな似たような漢字を選ぶのかと思っていました。私の世代だったら、きっと2~3種類しかなかったはずです(笑)。これがダイバーシティーなのかと実感もしました。
身内自慢が続きますが、多様な人材と巡り合えたのは採用担当者の功績でもあります。いろんな個性がぶつかり合いながら成長していく。ダイヤの原石を磨きながら、会社も一緒に伸びてゆく。今度は人材を育てる側の力量が問われる番です。自分の価値観を押しつけそうになりがちですが、ぐっとこらえる。同じ字を選ぶようにしてはいけません。
かくいう私が1字選ぶとしたら、若いときなら「明」でしょうか。周りの人から暗いと言われたことがない。その性格は今でも続いていると思います。それが発展して、今は「燃」か「挑」が思い浮かびます。あまり悩まず、単純明快で、決めたら燃えて頑張ろう。そんなイメージです。
みなさんはどんな1字を選びますか?
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年5月23日号