開成中学・高校の元校長で、現在は北鎌倉女子学園の学園長を務める柳沢幸雄さん。ハーバード大学でベストティーチャー賞に選ばれたこともある柳沢さんは、苦手だった英語をどのように克服したのでしょう。『AERA English2022』(朝日新聞出版)では、英語学習の原動力や、ハーバード大で英語で講義を行っていたときに大切にしていたことを聞きました。
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中高時代は英語が大の苦手でした。とがっていた時期で、辞書に書いてあることを覚えるのは頭の無駄遣いとさえ思っていました。大学受験の時も先生から「英語ができれば安心なのに」と言われたくらいです。
最初に洗礼を浴びたのが、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社した時です。仕様書はすべて英語で書かれ、理解しなければプログラムは組めません。毎日大量の資料と格闘しました。ある時、日本企業に納入した機械がトラブルを起こし、アメリカと日本の社員が合同で対応することになりました。明らかに向こうに問題があるのに英会話ができないため言い返せない。「これではいけない」と、会社近くにあった日米会話学院で週5日、午後6時から9時まで集中して勉強することにしたのです。
授業は実用に特化しており、前日渡されたダイアログを暗記し、生徒同士ペアになってその内容を再現するというものでした。ライティングも重視し、論題に対してまず、「メインアイデア(主題)」「サポーティングデータ(主題を立証する事実)」「エグザンプル(例)」の順に構成するという「型」も徹底的にたたき込まれました。日本の国語の授業では、論理構造を教えてくれません。論理的な文章の書き方に、ここで初めて触れました。
入塾テストの成績が存外よくて、本来前期に受講するフォニックスを飛ばして、後期から始めたのですが、発音の構造だけは、しっかり学んでおくべきだったと今も思います。