同院の脳動脈瘤の治療数は、未破裂動脈瘤に対する脳血管内治療がほとんどだ。そして近年、脳血管内治療では、従来の瘤のなかに金属性のコイルを詰める治療以外に、フローダイバーターという治療が増えている。瘤の出口のところでステントという細かいメッシュの金網の筒を広げ、ステントに瘤内の血流がブロックされ、血栓ができて固まり、瘤が半年から1年で脳動脈に吸収され徐々になくなるという治療法だ。
同院はその治療が、2019年あたりから増え続けていて、2020年の治療数の増加はそれが理由だと風川医師は説明する。
2020年、コロナが一番猛威を奮っていた6月、7月あたりは入院患者も手術数も若干減った時期はあったが、コロナが収束しはじめた2020年9月から手術は再び増えたという。
「予防的な手術ですから、一時期は躊躇して受診控えをしている患者さんが少なからずいたとは思います。しかしその間に、症状が悪化したという経験は幸いここ2年ありません。そして、当院は外来で診て手術が必要である多くの患者さんは2週間から1カ月以内には手術をおこなうようにしています。こんなに多く手術をしていても1カ月以上先の予定は通常ほとんどありません。未破裂動脈瘤は予防的な手術なので、患者さんの仕事の都合などで2カ月先に予定を組むということはありますが、原則は1カ月以内に手術をします」
近年、未破裂脳動脈瘤では、開頭手術ではなく脳血管内治療を希望する人が増え、同院が脳血管内治療の数が多く、治療に定評があることを知って来院する患者が増えている可能性はあると、風川医師は話す。
「当院は、私の指示のもとでないと手術はおこないません。そして脳血管内治療に関しては緊急も含めて、夜中の手術でもすべて私が入ります。直接執刀しなくても必ず手術室に入ります。もちろん10人いる執刀医それぞれが常に全力投球で最善を尽くしています」
現在、日本において脳動脈瘤の患者数が増えているというデータはない。しかし、今後はますます主要な病院に治療が集約化されていく可能性があるため、症例数の多い病院がさらに手術数を増やすことになるだろうと風川医師は話す。