
「同年代の子どもの家庭がどれぐらいの頻度で犬を飼っているのかといったデータがまだなく、犬の飼育などと急性肝炎発症と関係があるのかは調査中」(英国健康安全保障庁)
英国では5月3日現在、調査した急性肝炎患者132人のうち24人(18.2%)が新型コロナウイルスに感染していた。英国では血液検体を使い、過去の感染体験についても調査中だ。WHOは5月10日の記者会見で、早ければ1週間程度で英国から何らかのデータが得られる見通しであると明らかにした。
急性肝炎は、ほぼ無症状から肝臓がほとんど機能せずに肝臓移植が必要になる場合まで、症状が多様だ。一部の肝炎ウイルスが原因の場合を除き、特化した薬はない。炎症を抑える薬を使う、肝臓に負荷のかかるたんぱく質の摂取を控える、肝臓を休めるために安静にするといった、急性肝炎の症状を和らげる治療法が主体になる。
早期診断・早期治療を
対症療法で回復することが多いものの、まれに、移植が必要になるほど重症化することもある。中野教授は、
「手遅れになる前に、なるべく早く急性肝炎と診断して、治療を始めることが大切です」
と強調する。ただし、急性肝炎にみられる発熱や倦怠感などの症状の多くは、他の疾患でもよくみられる。皮膚や白目が黄ばむという「黄疸」以外、肝炎に特異的な症状はほとんどない。黄疸も急性肝炎の患者の全員に起きるわけではない。
保護者の注意すべき点を中野教授はこうアドバイスする。
「まれに重症化する子どもの病気は肝炎以外にたくさんありますが、いずれも重症化を防ぐには早期診断、早期治療が重要です。特に5歳以下は自分の体調不良を上手に言語化して訴えることができないので、周りの成人が、いつもと違う様子ではないか気を配ることが大切です」
(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2022年5月23日号より抜粋

