そこで、責任者である議員に、時間をかけて直接確かめることにしたが、その結果、私はその議員が決意とは程遠いところにいる、と判断せざるを得なくなった。
私は再び安倍首相に会って、残念ながら自民党の議員で憲法改正を決意している人間はほとんどいない、だから憲法改正より先に、日米地位協定の改定をやるべきだ、と強く求めた。
日米地位協定の改定をしないと、普天間飛行場問題も決着しないはずだ、とも言ったし、安倍首相はトランプ大統領(当時)とも昵懇(じっこん)の仲なので、あなたしかやることができないはずだとも言った。
安倍首相はやりますと答えた。
ところが、20年の春に外務省の幹部が、実は米国防総省の反対でこのままでは改定ができない、と言ってきた。なぜイタリアやドイツは改定できたのか、と問うと、欧州の国々はNATOに加盟しているからだ、と答えた。
そして、どうすればよいかと論じている途中で、安倍首相は辞任してしまったのである。
沖縄問題をどうするか。岸田文雄内閣の重大問題である。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年6月3日号