最近はバリアフリー住宅が増えてきて、段差をなくし、浴室やトイレに手すりをつけるなど、高齢者にやさしい構造になった家もめずらしくありません。それでも転倒やヒートショックなどの高齢者の事故の8割近くが自宅で起きているといわれ、家の中には思わぬ危険が潜んでいます。

 さらに、高齢者だけの世帯では、5年先、10年先も同じように健康な状態でいられるかという思いから、「なにかあったときにすぐに助けてもらえるだろうか」という不安を抱えている人が少なくありません。この先、一人暮らしになったら倒れていても気づかれないということもありうる。そうはいっても、思い切って住み替えるのだから、失敗はしたくない……あれやこれやと迷って、結局、結論を先延ばしにしているのが大半の現状といっていいでしょう。

■自分らしい老後のための住み替え条件

 いま住んでいる住宅に不満や不安を感じ始めたら、元気なうちに「住み替え」を考えるべき、と川口氏は言います。

「その不満や不安は年とともに大きくなっていきます。住み替えは“時期尚早”などという声をよく聞きますが、正直なところ、手遅れにならないかと心配ですね。気力や体力があるあいだに、通院や買い物に便利なマンション、息子や娘宅に近いマンションなど、手ごろな広さと安全性、利便性を求めて、住み替えを検討することをお勧めします」

 川口氏は住み替えを考えるにあたって、

(1)安全な環境に住む

(2)周りに人がいる環境に住む

(3)どんな人でもいいわけではなく、「幸せそうな人」「素敵な人」の近くにいる

 の3点を重視してほしいと言います。

 なおかつ、高齢になっても自分らしい生活を送るための条件も譲れません。自分らしいとは、自分の考え・気持ちどおりに、自分の意思で選択して生きていくこと。そのためには、▼自立性をもち、自己決定ができる、▼いまある機能を維持する、▼いまの生活をできるだけ継続させる、がカギになります。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
三世代同居は「年寄り」扱い