■自分の置かれている状況を理解できるように
編集長:意思決定支援外来では、どのようなステップで患者さんをサポートしているのでしょうか?
鳶巣:外来は約1時間を設けていて、おおむね四つのステップで進めていきます。よくあるパターンを紹介しますと――。
患者さんはある日、「がんが見つかった」など、突然よくないニュースを告げられて、「なんで私が……」と思考が止まり、頭が真っ白になってしまった。医師の説明を聞くには聞いたけれど、全然頭に入っていません。にもかかわらず、「1週間後に治療をどうするかの返事をください」と言われている状況です。
このような患者さんに対しては、まず告知された病気がどのようなもので、どれほど怖いのか、放っておくとどうなるのか、どんな治療法があるか。さらに、それぞれの治療の効果のみならず、その治療が副作用などでどれだけ自分の人生に変化をおよぼす可能性があるのかまでを、じっくりとお話ししていきます。
■自分らしい治療法、生き方が選択できるように
鳶巣:すると、患者さんは自分の置かれた状況について少しずつわかるようになり、提示された治療の内容について考えがおよんできます。そして、「治療中はどのようになるのか?」「治療で生活に支障が生じるのか?」「この治療をこのまま受けて大丈夫なのか?」など、さまざまな疑問が出てきます。
このステップを通り過ぎると、あらためて、自分の人生の中で受け入れられることと、受け入れられないことがはっきりしてきます。例えば、「副作用が残る治療はできない」、逆に「この治療なら受けてもいい」という具合に、自分らしい治療の選択、生き方の選択ができるのです。
終末期に近い場合は、最期の時間をどこでどのように過ごすかについて、同じようなステップで進めていきます。最終的には、「人生会議(アドバンスケアプランニング、ACP)」(もしものときのために希望する医療やケアについて前もって考え、家族等や医療者と話し合い、共有する取り組みのこと)に臨む準備ができます。