作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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私がパーソナリティーを務めるラジオ番組には、毎日たくさんのメールが届きます。ありがたいことです。時間がある時は、できる限りすべてに目を通すようにしています。
5月6月あたりになると、新社会人や新入生の方から、仕事や学校でうまくいかず疲れてしまったとか、人前で泣いてしまったというメールがポツリポツリとくるようになります。新天地で心に疲れが出る時期ですものね。五月病というのは、やはり存在するのだなと実感する瞬間です。
私は長らく「新人として新天地に赴く」行為をしていないため、メールを送ってくれた若者の心を、現在進行形の我がこととして体感するのが難しく、申し訳なくなります。
もちろん、ウン十年前には同様の経験をしました。しかし、加齢により記憶がぼんやりしてきたのと、経年変化で思い出を自分勝手に改ざんしている可能性が否めないので、安易に「頑張って!」とは言えないのです。あの時のつらさを、やるせなさを、私は同じように再び味わうことができません。
本当なら隣に座って若者の背中をさすりながら、ゆっくり話を聞いてあげたいところ。現実にはそうもいかないので、いただいたメールを読んだり、番組で紹介したりします。「ああ、私だけではないのだな」と思ってくれる人がいるに違いないと思うからです。