2017年の舞台「クライムズ・オブ・ザ・ハート」に出演したときの安田成美さん
2017年の舞台「クライムズ・オブ・ザ・ハート」に出演したときの安田成美さん

 木梨さんと俳優の安田成美さん夫婦は、2男1女に恵まれた。

 父親として、子どもたちに絵を教えているのだろうか。

「いや、したことないですね。ただ昔は、僕も家で描いていたからキャンバスや絵の具、筆など子どもが好きに手に取れる場所に何でもあったから、好き勝手に筆を持っていたみたい。自宅には、子どもらが描いた絵や立体作品なんかが飾ってありますよ。アトリエに子どもが来て、自由に描いていたこともあったしね」

 英才教育といった子育てとはまた違う、子どもの裁量を大切していることが伝わる。

「上にあるかな?」

 木梨さんがおもむろにそうつぶやくと、アトリエの上のフロアからスタッフが2枚の油絵を持ってきた。次男が昔、学校の課題で描いた両親の絵だという。木梨さんと成美さんが柔らかな表情でほほ笑んでいる。木梨家の温かな空気が伝わってくるような絵だ。

 木梨さんは多忙を極める一方で、成美さんも俳優として活躍している。「共働き」の木梨家で3人の子育てを、どう乗り切ったのだろうか。

フェアリーズ ー街ー 2019年 (C)NORITAKE KINASHI
フェアリーズ ー街ー 2019年 (C)NORITAKE KINASHI

■反抗期も子どもと一緒にケンカしちゃう

「ほぼすべて成美さんです。3人分のお弁当を作り、勉強から子どもからの進路相談から何もかも、成美さんがやってくれた。子どもが成美さんに何か話しているその横で僕が、うんうんって頷いている。僕の役目は、成美さんが迷った時の『成美相談所』、そんな感じですよ」

 それぞれの道を自由に、歩む三人の子どもたち。反抗期はなかったのか。

「あまり記憶にないですね。反抗されても、子どもと一緒になってケンカしちゃうだけだったかな。俺自身が4番目の子どもみたいなもので、精神年齢は小学3年生くらい。子どもたちは俺のところに寄ってこないもん。それに、子どもらは成美さんには逆らっちゃいけないってわかっているしね」

 木梨さんの作品は、抽象画やデザイン画が多いが、人物画はほとんどない。いつか、自分も小学3年生の目線になって、自分と成美さんを「パパ」と「ママ」として俯瞰した肖像画を描いてみるのもいいね、と木梨さんは話す。

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コロナ禍だからこそ「手をつなぐ」作品