つみたてNISAの対象商品として主流のインデックス型投信の場合、分配金を抑制して再投資に回す方針のものがほとんど。だが、ETFは分配金が定期的に支払われるので、お小遣いのようでうれしい。
「たとえば1000万円分のETFを持っていて、分配金利回りが3%なら年間30万円。税引き後でざっくり24万円、1カ月当たり2万円。老後の暮らしの足しになりますね。
保有額がもっと多ければETFの分配金だけでも生活費をまかなえます。分配金をもらっても元本が減る感覚はなく、安心感があります」
これが、ETFを長期投資する最大のメリットだろう。老後は生活費のために資産を売る必要が出てくる。投信の場合、分配金は再投資されているので、取り崩す行為はどうしても「元本を削っている感」がある。投信でも分配金の分だけ計算して取り崩せばETFと同じことなのだが、気分の問題。
「資産を効率的に増やすという意味では投信のほうがいい。それでも、ETFを好む人はいます」
リタイアして資産で生活費をまかなう段階に入ったら、自分の手で取り崩すか、分配金が勝手に振り込まれるか。好みが分かれる。
ETFの分配金は「強制的な利益確定」ともいえる。
「お金を育てる段階では、ETFで分配金が出ても手動で再投資に回しましょう。面倒ですし、分配金が出た段階で税金も差し引かれるので通常の投信より『増え方』の面で不利ですが、そこは『老後の打ち出の小づち』を作るための手間と考えましょう。
分配金を再投資すれば少し効率的に増えていきます。ETFがまとまった資産に育ったら、分配金が口座に入ってくる喜びを味わえます」
100万円分の通常の投信とETFの資産の増え方を比較すると、どうなるか。期間10年、共に毎年5%ずつ価格が上昇、ETFは元本から毎年利回り3%の分配金が支払われる(その分、元本は減少)と仮定して、検証した。
10年間の資産の推移を見ると通常の投信は215万円。ETFは元本が162万円に増え、分配金は10年間の合計で30万円。合計すると192万円なので、実質的に23万円ほど通常の投信のほうがお金は増えていることがわかる。
純粋にお金を増やすなら通常の投信、増やしたお金の一部を使っていきたいならETF。現役世代の資産運用は通常の投信がメインでかまわない。さらに老後の安心と便利さを準備したいならETFもつみたてる、という使い分けが肝心だ。
さらに、東証ETFならネット証券の「貸株サービス」も使えると、たぱぞうさんがアドバイスをくれた。
「S&P500の東証ETFなどを証券会社に貸し出すと、金利がもらえます。現在は、貸し出したETFの金額に対して年0.1%程度の金利を円で受け取れます」
◎たぱぞう/投資顧問アドバイザー。米国株や不動産への投資で財産を億に乗せ、2019年、40代で会社員卒業。自身のブログでも海外ETFをいち早く紹介。著書多数
(文/木村慎一郎、編集/中島晶子)
※『AERA Money 2022夏号』から抜粋