イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 この翌年に4軒、また3軒と減っていき、現在は自分の師匠のみ。うかがわなくなった師匠方は「あいつ、今年から来なくなりやがった……」とお思いでしょうか。べつに感謝の気持ちが無くなったわけじゃありません。お麩以外思いつかない自分の情けなさに断を下したといいますか……。

 去年、二つ目に昇進した弟子に「何軒くらい御中元に回ってる?」と聞くと「師匠と大師匠だけです」。自分のことは棚に上げ「若いのに少ないなぁ」と言うと「コロナで回らないほうがいい、みたいな空気が若手にありまして。配送も気が引けますし」。なるほどね。コロナ禍にも新しい二つ目さんが増えました。コロナが落ち着いたら、また以前のような御中元の慣習は戻ってくるでしょうか。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

週刊朝日  2022年6月10日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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