津田さんは執筆のほか、ライトノベルに関して他の作家から相談を受け、アドバイスを送ることもある。
「人気を得るうえで大切なポイントは、文章が短く読みやすいことです。また、サイトに投稿する時間も関わってきます。昼休みや通勤通学時間、寝る前の夜などにアクセスが上がることが多い。僕の場合、ほかの人気作品と敢えて投稿時間をずらすこともあります」
■右肩上がりの物語が人気
どんな物語が好まれているのか。内容についてはこんな傾向があるという。
「異世界ものは王道の人気です。けれども、男性主人公の場合も女性主人公の場合も、不幸になる話は受けにくい傾向です。たとえば主人公が弱くて負けたりするとPV数が減り、明らかに読者が離れるんです。読者がつらい話や不幸な境遇を許容してくれるのは1話目まで。例外はありますが、その後は基本右肩上がりの物語が求められていると考えています」
長期連載であれば、“ちょっと幸せな日常”がずっと続いていく作品が受けやすいのだという。
「ストレスを感じることなく、読者がちょっとだけ気持ちよくなれる。新聞連載の4コマ漫画と同じ位置づけなのではと思います。現代の読者は、通勤途中や夜寝る前のひととき、5分や10分のささやかな楽しみを求めているのかもしれません」
投稿された小説は、人気を得れば書籍化されることも多い。だが、津田さんは読者層の違いを踏まえ、書籍化の際には大幅な改稿を行うという。
「サイトに投稿した小説を書籍にする際には、大幅に書き直します。5万字くらいの作品であれば、だいたい2倍以上になります。読者層が違うからです。投稿サイトの読者は10~20代が中心ですが、書籍は30代の購入者層を意識します」
■ラノベは大衆娯楽の原点
ラノベは黎明期だった1980年代から40年近い文化の蓄積がある。直木賞や山本周五郎賞をはじめとする、大衆文学賞受賞者を見渡しても、元々ラノベの文庫で本を出していた作家も少なくない。