もの忘れが増えてきたとき、50歳を超えた人なら若年性認知症ではないか、一度は不安を感じた人も少なくないだろう。どのような検査をどこで受けられるか知っておきたい。
アルツハイマー型の認知症が疑われる人には「アミロイドPET」検査がある。これは症状が出る20年前から蓄積するアミロイドβの状態を見られるため、超早期から診断が可能だ。ただ、医療保険が適用されないため、全額自己負担になる。
国立長寿医療研究センター「もの忘れセンター」には、50代前半の患者も多いという。職場や家庭で募る不安な気持ちを解消したいとの思いで、こういった認知症専門機関に足を運ぶ気持ちはわかるが、過剰にならないようにしたい。
認知症は認知機能の低下により生活に支障をきたしている状態をさす。そのため、もし脳の中で病変が始まっていたとしても、日常生活や社会生活を送ることがきちんとできていれば、その時点では「認知症」とは言わない。
「進行がゆっくりの方もいらっしゃいます。認知症の対処薬はありますが、飲んでいても進行が速い人もいれば、飲んでいないのに進行が遅い人もいらっしゃいます。人それぞれです」(同センター・武田章敬センター長)
横浜市立市民病院は、既存の脳ドックの検診内容に、脳の内側側頭部(海馬など)の萎縮を客観的に評価するVSRADや海馬体積測定などの認知症リスク判定検査「認知症等オプション」をつけたコース(6万8600円)をこの4月から始めた。
脳ドックは脳動脈瘤や脳梗塞など血管異常を早期に見つけ、脳血管障害を予防するのには役立つが、認知症の早期発見には十分とは言えないため、判定検査もすることで将来の認知症発症リスクを診る。
超高齢社会になり、50代はまだ折り返し地点。最後までいきいきと豊かな人生を送るためにも、脳の健康診断が求められる時代になってきた。若年性認知症は決して他人事ではない。(本誌・大崎百紀)
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※週刊朝日 2022年6月10日号より抜粋