妻子がいることを隠して交際した女性を殺害し、遺体を畑に埋めたなどとして、殺人などの罪に問われた男に、懲役20年の判決が言い渡された。「おなかの子どもをさわりたい」。そう言って女性の後ろにまわり、首を絞めて殺害……。裁判長は「男女関係を動機とする殺人事件の中でも非常に重い部類」と厳しく指摘した。関係者への取材やこれまでの裁判などから明らかとなった、被告の身勝手な動機や犯行手口などを説明する。
神戸地裁姫路支部で6月6日にあった裁判員裁判の判決。殺人、死体遺棄、窃盗の罪に問われ、懲役20年(求刑懲役22年)を言い渡された兵庫県姫路市の無職関口羊佑被告(36)。
昨年6月ごろ、独身者が前提であるマッチングアプリを利用し、姫路市のAさん(当時34)と知り合った。Aさんは真剣に結婚相手との出会いを求めていたため、当初から関口被告に「結婚を前提に」と告げていた。
関口被告は、妻子がいることを隠し、自分も同じ考えであることを伝え、翌月ごろには肉体関係を持つようになった。
9月ごろ、Aさんは妊娠していることがわかった。しかし、その直前に、関口被告は一方的に連絡を絶っていた。Aさんは探偵を雇い、関口被告を調べ、探偵は関口被告にAさんの妊娠を知らせた。
そこで、関口被告は、Aさんと連絡をとり、
「(子どもを)おろしてほしい。結婚もしない」
と言い放った。それでもAさんは母親に相談して、子どもを出産して一人で育てようと決意し、関口被告に認知するよう求めた。
しかし、関口被告は、
「認知などしない。認知するなら、子どもを奪い取って捨ててやる」
などと言って断ったため、Aさんは弁護士に相談し、関口被告に強制認知など法的手段もあると告げた。
すると、関口被告は同年10月23日午後2時ごろ、Aさんに、認知などについて「話し合う」と伝えた。Aさんと落ち合い、車で人気のない姫路市内の墓地の駐車場に連れ出した。
その時の状況について関口被告は、論告求刑の裁判で、
「Aさんのいる後部座席に移って『おなかの子どもをさわらせてほしい』と背後から、Aさんを抱きかかえ、おなかに手をあてました。自分には妻子がいたので、養育費は支払うから認知はやめてもらえないかとお願いしたが、Aさんは『もう話し合うことはしません。すべて弁護士に任せます』と言いました」
と説明した。
そして、関口被告は、
「このままでは妻子にばれてしまう」
とAさんの背後から首を絞め、殺害した。