内野聖陽(うちの・せいよう)/ 1968年生まれ。神奈川県出身。96年にNHK連続テレビ小説「ふたりっ子」、97年にドラマ「ミセスシンデレラ」に出演し注目を集める。07年大河ドラマ「風林火山」主演。近作に映画「劇場版 きのう何食べた?」、舞台「化粧二題」などがある。昨年、紫綬褒章を受章した。出演映画「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」が現在公開中。同「最後の錬成」は24日公開(構成/長沢明 撮影/大野洋介 ヘアメイク/柴崎尚子 スタイリスト/中川原寛)
内野聖陽(うちの・せいよう)/ 1968年生まれ。神奈川県出身。96年にNHK連続テレビ小説「ふたりっ子」、97年にドラマ「ミセスシンデレラ」に出演し注目を集める。07年大河ドラマ「風林火山」主演。近作に映画「劇場版 きのう何食べた?」、舞台「化粧二題」などがある。昨年、紫綬褒章を受章した。出演映画「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」が現在公開中。同「最後の錬成」は24日公開(構成/長沢明 撮影/大野洋介 ヘアメイク/柴崎尚子 スタイリスト/中川原寛)
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 演技派俳優として、映画やドラマ、舞台で活躍する俳優・内野聖陽さん。現在、舞台「M.バタフライ」の稽古に励んでいる。舞台に立ち続ける理由、演じるうえで大切にしていることは──。

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 熟成させたものが好きだという。酒や料理だけでなく芝居においても、時間をかけて生まれた味わいに惹かれてきた。

「長く俳優を続けたからには、わかりやすい演技や、口当たりのいい芝居ばかりをしてはいかんのだ、という思いがあります。酒でも料理でも、熟成させれば、うまいまずいを超えた、芳醇な広がりがあるじゃないですか。僕の芝居の中にも、そういう広がりとか奥ゆきが出せたらと思うんですよね。とくに舞台のときは、『僕の毛穴、背負っている空気から想像してもらえたら』と、お客さんが想像する余白を残しておきたい欲はある。すべてを説明してしまうのは、無粋な気がするんです」

 誰もが、「この人が出ているなら観たい」「内野さんが出ている作品なら面白いに違いない」と思えるような、日本を代表する俳優の一人だが、どんなに経験を重ねようと、創作の最中は、ああでもないこうでもないともがき苦しむ。

「役者であることがしんどいと思ったことはないけれど、お芝居の稽古の最中はずっとしんどい。でも、不思議と生みの苦しみがあるほど、良い作品になることが多くて……。毎日舞台に立つことで、作品がまるで生き物のように、成長していく感覚を味わえるのは楽しい。それが、僕がコンスタントに舞台を続けている理由の一つでもあります」

 舞台に立ち続ける理由はほかにもある。

「演じながら、お客さんの反応がダイレクトに伝わることは、舞台ならではの面白さです。役者は、演じながらお客さんのエネルギーをいただいているんです。シンガーのライブでも、声援の大小で全然違うパフォーマンスになるなんて聞きますが、お客さんとのセッション感があることで、稽古ではたどり着けなかったような、ぶっ飛んだところに行ける可能性も高いんですよ(笑)」

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