職場のいじめ対策として、いじめに遭ったときの証拠を音声やメモで記録しておくことが重要だ、と専門家は指摘する(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
職場のいじめ対策として、いじめに遭ったときの証拠を音声やメモで記録しておくことが重要だ、と専門家は指摘する(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
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 いじりで同僚や部下が笑ったとしても、心の中では傷ついている人が多い。全国の労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」の相談も急増中だ。AERA 2022年6月13日号の記事から紹介する。

【画像】「おい、ドスコイ!」――職場でいじられ涙したというharaさんが自らの体験を描いた漫画がこちら

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 今も、いじめられていたときの恐怖がフラッシュバックする。

「呼吸が苦しくなったり、急に泣き出したりします」

 2年前まで介護施設で働いていた中部地方で暮らす女性(20代)は、そう明かす。

 女性は元々、軽度の知的障害と発達障害のADHD(注意欠如・多動症)を抱えている。就職時の面接では「一つずつ指示してほしい」「ゆっくりでないと理解できない」と伝えていた。しかし、就職後まもなく言葉の暴力が始まった。

■復帰しても再びいじめ

 すぐに仕事を覚えられなかったり、二つ以上のことを同時にできなかったりすると、同じ部署の先輩や主任が、

「なんでそれができないの!」

「なんで同時にできないの!」

「前も教えたじゃん!」

 などと罵声を浴びせてきたという。

 上司に相談しても信じてもらえないと思い、一人で悩みを抱えた。しだいに精神的に追い詰められ、本気で命を絶とうと考えたこともあった。

 精神科を受診し、うつ病と適応障害と診断されて入院。退院して職場に復帰したが、いじめは再開し体調を壊して再び入院した。すると、研修期間中という理由で「首」を言い渡され、8カ月で退職した。今も精神科に通院し、睡眠剤を飲まないと寝ることができないという。

「社会に出るのに恐怖を感じて、仕事に就くことができません」

 職場のいじめが深刻化している。厚生労働省によれば、2020年度、全国の労働局などに寄せられた職場のトラブルなど民事上の相談件数は延べ約35万件に上る。内容別では、パワーハラスメント(パワハラ)などの「いじめ・嫌がらせ」が最も多く約8万と全体の約23%。9年連続トップで、この10年間でほぼ倍増した。事例としては、上司から非難・罵声を浴びせられるなど精神的な攻撃が挙げられている。

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