仕事が忙しく大変だと部下への指示が強い口調になることもある。仕事が落ち着いたときに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるなど、「仕事が大変なとき以外にどう接しているか」が大切と後藤さんはみている。
さらに、上司と部下の関係では言えないこともある。その場合、第三者に部下の本音を引き出してもらい、伝えてもらおう。中高年の上司に新人の指導が難しければ、新人の2、3歳くらい年上の人を信じ、指導を任せ、間接的に状況を知らせてもらうのもいい。
中高年の上司が、部下から話してもらいやすくするには、どうすればいいのか。仕事では有能な人であっても、人間としての弱点も持っているという意味で、スキを見せるのも効果がある。「いい意味でスキをつくっている人は話しやすくなる」(後藤さん)
仕事でパワハラとコミュニケーションの問題は切り離せない。日本産業カウンセラー協会常務理事で産業カウンセラーの中川智子さんは「上司は良かれと思って、加害者という意識がなく、厳しく言えば相手が動くという誤解がある」と話す。
コミュニケーションは一方通行でなく、双方向で成立するものと中川さんは強調する。特に、若い世代は「伝える力」、中高年は「聞く力」が重要という。中高年は成功や失敗の経験を積み重ねているため、ついつい話してしまいがち。相手に求められてから話すのがいいとアドバイスする。
さらに、中高年は、自分なりの先入観で相手の話を聞いてしまい、判断する傾向があるとも。「自分のフィルターを通して相手を見てしまうので、自分の答えや意見をわきに置き、まずは相手の言うことをそのまま聞くようにするといい」とアドバイスする。それが相手を尊重することにつながると話す。
話を聞く際は「相づち」も大切になる。「どんな気持ちで聞いているか、相手に敏感に伝わる。相手が話しやすくも、話しにくくもなり、聞き上手な人はうまい」(中川さん)。何か作業をしながら聞くのではなく、相手を見て聞くよう心がけたい。じっくり聞き、うなずくことで、相手が話すのを促すことにつながるという。