江川雅子(えがわ・まさこ)/1956年生まれ。米ハーバード・ビジネス・スクール修士課程修了。東京大学理事などを経て、2022年から成蹊学園・学園長(撮影/編集部・井上有紀子)
江川雅子(えがわ・まさこ)/1956年生まれ。米ハーバード・ビジネス・スクール修士課程修了。東京大学理事などを経て、2022年から成蹊学園・学園長(撮影/編集部・井上有紀子)

──東大では女性理事としてどんなことをされたのですか。

江川:私が最初に実行したのは、女性トイレを増やすプロジェクトでした。役員室には女性トイレができることになりましたが、事務職員が使うフロアでは、女性が少なかった時代の施設がそのままで、女性トイレが少なかったからです。

 管理職の女性比率が低かったので、その対策にも取り組みました。女性の総長補佐も増えて、その方々がその後、理事や副学長となっています。

 最も力を入れたのは国際化です。日本人学生の送り出し、外国人留学生の受け入れ、海外大学との研究交流などを通じて、ダイバーシティー(多様性)の向上を目指しました。ダイバーシティーはイノベーションの源なので、大学にとってとても重要です。

■知名度とネットワーク

──田中英寿・前理事長の脱税問題などで揺れた日大を、林さんはどう改革すればいいですか。

江川:日大の状況はわかりませんが、大変だろうと思うのは、女性で初めてというより、大学や組織運営の経験をお持ちでないことだと思います。日大はとても大きくて複雑な組織です。大学には16学部もあるうえ、付属校が全国にあり、病院も抱えています。それに大学では教員にアメとムチを使えません。企業では昇給や昇格をアメに使いますが、教員は昇給の幅が限られる上に、研究第一なので学部長などの地位に魅力を感じません。一方、終身雇用権を獲得した教員は解雇できません。つまり、人事権でなく、説得で人を動かさなければならないのです。

 理事や学内のあらゆる場所に女性を含めた多様な人材を入れていくのはとてもいいことだと思います。同時に、日大の将来を真剣に考えている現場の人たちの意見も聞く必要があるでしょう。知名度やネットワークを生かして、日大に新風を吹き込んでほしいと思います。改革の成功を期待しています。

(構成/編集部・井上有紀)

AERA 2022年6月20日号

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