いつ来るか、その時の備えは十分か──。地震大国・日本では、地震と防災は多くの人にとって関心事だ。国や自治体などが公表する予測や最新被害想定から、迫りくる大地震を読み解く。AERA 2022年6月20日号の「地震」特集から。
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この日本地図は、全国地震動予測地図という。2020年からの30年間で震度6弱以上の揺れに襲われる確率を可視化したものだ。地震調査研究推進本部(地震本部)が公表している。
一目で、日本で大地震が起こる確率がいかに高いかがわかる。日本のほぼ全域で黄色の「やや高い」以上、特に北海道や関東から中部、近畿、四国にかけての太平洋岸の確率が極めて高い。
太平洋岸の確率が高いのは、「海溝型地震」の存在があるからだ。東京大学地震研究所所長の佐竹健治教授はこう解説する。
「地震の種類をおおまかに分けると、陸のプレートと海のプレートの境界で起きる海溝型地震と、内陸の活断層で起きる地震があります。海溝型では、千島海溝や日本海溝、南海トラフで数十年から百数十年のサイクルで起きるマグニチュード(M)7~8以上の地震がいくつも知られています。沿岸は大きな揺れになり、津波も発生します」
一方、内陸で強い地震が起きないわけではない。活断層は地震の間隔が長く、千年単位とみられているところが多い。直近の確率は低いが、日本には無数の活断層が存在し、未知の断層もある。16年の熊本地震も活断層によるが、30年以内にM7クラスの地震を起こす確率は1%未満とされていた。当時、支援活動を行った男性(40)は言う。
「避難所で何度も『想像していなかった』という話を聞きました。いつどこで地震が来てもおかしくないと痛感しました」
高い確率で発生が予想されている大型地震もある。国が公表する被害想定も衝撃的だ。犠牲者の最大値は南海トラフ地震23万1千人、千島海溝地震10万人、日本海溝地震では19万9千人──。いずれも「最悪のケース」だが、荒唐無稽な数字ではない。