足立区によると、区内の住宅の耐震化率は22年3月で92.6%。26年3月までに95%を目指す。また、木密地域の不燃化のため、北千住駅周辺を含む中南部一帯を都指定の不燃化特区とした。不燃領域率は22年3月で64%。70%で延焼をほぼ防ぐとされ、27年度中に68%にすることを目標に対策を進める。

「(特区内でも特に木造住宅が密集していた)西新井駅西口周辺の不燃領域率も14年の48%から57%に伸びた。足立区は昔から危険と言われてきて、防災に注力しています」(建築防災課)

■住宅の耐震化率上げる

 実際、耐震化や不燃化の促進は首都直下地震の被害低減に直結する。実は、東京都が12年に公表した前回の被害想定では最大で建物被害30万4300棟、死者9641人と見積もられていた。今回の公表ではともに4割近く少なくなった計算だ。前回の想定に使った東京湾北部地震は発生確率が低いことがわかり、モデル地震を都心南部直下地震に変更しているため、単純比較はできないが、耐震化・不燃化が進んだことが最大の要因だ。平田さんは言う。

「都全体で見ると、この10年で住宅の耐震化率は81.2%から92.0%に上昇し、1万6千ヘクタールほどあった木造住宅密集地域は約半分の8600ヘクタールに減りました。建物の全壊と焼失がそれぞれ3分の2ほどになっています。仮に耐震化率を100%にできれば、想定される犠牲者はさらに6割少なくなる。一方、今も残る非耐震住宅や木密地区には一人暮らしの高齢者など災害弱者が少なくありません。地域コミュニティーが必ずしも機能しない現代の都市で彼らをどう守るのか。地域の防災力が問われています」

 また、タワーマンションの増加により、エレベーターが停止して身動きが取れなくなる人が増えるなど、新たな「被害」も想定される。避難生活による持病の悪化などの災害関連死や物資の不足、通信の混乱など定量的な評価が難しい被害もある。

「実際に地震が起きたとき、都全体の犠牲者をいかに減らすかということと、ひとりひとりが生き延びるために何をしなければいけないかはイコールではありません。災害にあったときどう行動するかを、自分ごととしてイメージしておくことが必要です」(平田さん)

(編集部・川口穣)

AERA 2022年6月20日号

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