最側近のショイグ国防相やパトルシェフ国家安全保障会議書記も「任務完了まで作戦は続く」「我々は期限にこだわっていない」など、戦闘の長期化を辞さない姿勢を示すようになった。
こうした政権の姿勢は、ロシアの世論にも影響している。
著名な世論調査機関「レバダ・センター」が5月下旬に行った世論調査では、軍事作戦が2カ月以内に終わると答えた人は、わずか11%。2カ月~半年以内と見る人も、26%にとどまった。全体の半数近くは、半年以内には終わらないと考えている。
冒頭で紹介した外務省の幹部会に話を戻す。
ロシアは今、戦闘の長期化だけでなく、日本を含む「西側諸国」との関係を長期にわたって事実上断ち切ることを前提に、国家としての生き残り策を模索しているようだ。
関係者は「ロシアに制裁を科している国は少数派だ。多くの国でロシアが持つ貿易、投資、知識、教育などの潜在力は必要とされている」と胸を張る。
パトルシェフ氏は最近のインタビューで、国産品による輸入品の代替が進めば、経済上の問題は回避できると強調した。さらに、国の経済力は米ドルで評価されるべきではないとも主張し、グローバルな世界経済から距離を置いて生きていく考えを示した。
しかし、実際にそんなことが可能なのだろうか。例えば、ロシアが精密電子機器を自前で開発することには懐疑的な見方が根強い。だとすれば、最新鋭の兵器開発もままならなくなる。
米ドルの影響圏から独立すると口で言うのは簡単だが、結局はドルとルーブルの公定レートと闇レートの間に著しい乖離(かいり)があったソ連時代のような経済に逆戻りするだけではないのか。
最もうまくいったとしても、中国の事実上の衛星国のような存在になることは避けられない。
ロシアのGDPは1.5兆ドルで、今でも中国の約10分の1に過ぎない。国力の差は、ますます広がるだろう。
※週刊朝日 2022年6月24日号