歌手の秋元順子さん
歌手の秋元順子さん

 食事会って言えば来るだろうって思ったんでしょう。「子どもも小さいし、まだ無理」とお断りしたのですが、「あの昔歌ってたやつ歌ってよ」ということで「南国の夜」を歌いましたら、ムラムラっと来ちゃって……。お客さんから拍手も頂いて、うわーこんな楽しいこと休んでたのーって。主人に聞いたら「今までの仕事や家事のスケジュールを全部こなせるならやってもいいよ」って言われました。自分の好きなことのためにそれ以外をほっぽらかしにするのは違うなぁと思い、子育ても仕事も歌もほぼ完璧にこなしてきたつもりです。

 でも体が疲れて疲れて配達の途中で寝ちゃったりして、やっぱり歌をやめようかなってダイニングテーブルで考えていたある日。まだ小学生の娘が「順子さん、本当にやりたいんだったらやれるところまでやってみたら」って言ったのね。その言葉は、幼いころ初めて学校で「いい声ね」と褒められたときと同じくらい私を奮い立たせました。

 自分が真剣に向き合っていると、いいお話って来るものですね。うちのジャズクラブで歌ってほしいという依頼をいただきました。しかも新人なのにベテランのミュージシャンと組みなさいって。「スキルにギャップはあるけど、やる気があって恥をかきながら勉強すれば差はすぐ埋まる」って言われて、感動して。とにかく他の人のステージを見て回って、衣装とかお客様の要望をリサーチしました。花屋だったころ、新しいパートさんにはお金を持たせて、「あそこの花屋さんで花束を買って、よく見てきて下さい」って勉強して頂きました。ライバルから学ぶって絶対必要なことですね。次第に私を気に入って下さるお客様が出てきて、仕事が増えていきました。

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主人は一言、「うんそうだね」って(笑)