後日、Aさんから煮貝が送られてきた。煮汁に浸った鮑の真空パックが桐箱に収まっている。調べたらめちゃくちゃ高価。スライスしたキュウリを添えてワサビで食べてもよし、身を厚めに切って肝も混ぜて炊き込みご飯にしてもよし。うめえ、うめえよ、Aさん。すぐに御礼の電話をする。「何よりです。山梨は美味しいモノたくさんありますから、またおいでくださいね。馬肉も美味いから今度馬刺し送りますよ!」
……汗だくで煮貝を運んでやってるのに、まさかこの後自分も食われるとは思ってもなかっただろうな……馬。そんな山梨、大好きですよ。タンパク源がとれりゃ海なんかいらねーよ、山梨!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2022年7月29日号