性格とは関連なし

――自分の血液型を知ったところで、せいぜい「血液型占い」を楽しめる程度なんですね……。

山本:日本人がこれだけ自分の血液型を知っているのは、血液型による性格診断の影響でしょうね。ただ、血液型は赤血球の表面にある抗原と血清に含まれる抗体のタイプで分類したものですから、性格に関連しようがないかなと……。

 医療者から見れば、血液型は血液検査からしか得られない、極めてパーソナルな医療情報です。それを自分で把握しているだけならまだしも、友人や上司などにまで知られているというのは結構、空恐ろしいことだなと思っています。だって、他人の尿酸値とか知らないじゃないですか。

気をつけたいこと

――「血液型は何だっけ?」という話題は違和感がないですが、「あなたの尿酸値いくつだっけ?」っていきなり聞くのと同じことなのか……。「お前は大雑把な性格だから、中性脂肪が高いだろ?」とも言いませんものね。

山本:日本にはなぜか血液型だけはオープンにする風潮がありますが、センシティブな個人情報ですよね。気軽に聞くべきものでも、話すべきものでもないのかなと。

 最近は「ブラッドタイプ・ハラスメント」(略称ブラハラ、英:blood-type harassment)という言葉も出てきて「血液型を理由にして行われる嫌がらせ」が問題視されているようですが…。

「善意」によるトラブル

――『すばらしい人体』では人体が持つ優れた機能を知ることができてなんだかうれしくなってしまうのですが、その一方で「正しい医療情報を身につけてほしい」という先生の切なる思いも込められているように思います。

山本:例えば、がんになった患者さんが、知人から高額な健康食品やサプリメントを勧められ、困ってしまうケースはよく見聞きします。食品によってがんが治ることはありません。

 良かれと思って行った行為でも、その背景に十分な知識がないと、かえってその善意が患者さんを傷つけてしまうことがあるんです。そういう意味でも、医学に関する情報は私たちの生活に密接にかかわっているんですね。

 自分や周囲の人が病気になったとき、慌てず騒がず、適した態度がとれるかどうか。それは普段からどんな医療情報に触れているかにかかっています。

『すばらしい人体』が医療情報リテラシーを磨くきっかけになればと思います。

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