
林:若いタレントさんもリスペクトして大切にしてるんでしょう?
佐久間:だから彼らが売れてもいまだに出てくれるんだと思います。劇団ひとり、バナナマン、東京03、オードリー、千鳥とか。
林:皆さんいま超売れっ子ですよね。わかるんですか、この芸人売れるなとか、売れないなとか。
佐久間:売れるか売れないかよりも、まだ出してない引き出しがあるかないかで、仕事をするかどうかを決めるという感じですかね。「ふつうの鍵じゃ開かない引き出しを持ってそうだな。その鍵は俺しか持ってなさそうだな」と思う芸人と仕事して、ガチャッと開いたときがいちばんうれしいですね。
林:なるほどね。
佐久間:ほかのディレクターじゃ開けられなさそうだなという引き出しを持ってる芸人さんに、魅力を感じちゃうんですよ。
林:でも10年前だと、芸人さんはフジ(テレビ)とかに出たかったわけでしょう? テレ東(テレビ東京)じゃなくて。
佐久間:そうでした。フジとかにまだピックアップされてない人と仕事してたのが、結果的にいま売れてる人になってるわけですね。
林:それで話題になって佐久間さんの名前がパーッと出てきて、私の姪が言ってたみたいに「若い人、みんな知ってるよ」ってなったわけですね。
佐久間:それはラジオをやってるのもあると思うんですけど、僕、「ピラメキーノ」という子どものバラエティー番組やってたんですよ。それを見て育ったのが、いま20代ぐらいかな。乃木坂46とかジャニーズの若い子たちはみんな知ってるという感じ。子ども番組ってこんなふうに効いてくるんだと思いました。
林:そうなんですか。かつて「おニャン子」の時間帯と言われてた夕方の枠を、佐久間さんは「子どもとお母さんの時間帯だ」と見抜いたわけですよね。
佐久間:僕が「ピラメキーノ」を立ち上げる前、みんな「おニャン子クラブ」の幻想があるんで、テレ東はティーン向けの番組をやろうとしてたんですよ。でも、どう考えたって、夕方、テレビを見てるのは未就学児と小学生の低学年がメインで、お母さんは家事してて、ベビーシッター代わりに子どもにテレビを見せてることが多いなということを、子どもがいたのでわかったんです。それを会社に説明したんだけど、なかなかわかってもらえなくて。そのころ子ども番組にはスポンサーがつきづらいと言われてたんですね。それで「半額の予算でいいので、帯(番組)やらせてください」と言って。
林:それが通ったんだ。やっぱりテレ東でよかったかもしれない。フジだったらダメだったかも(笑)。
佐久間:そうだと思います。しかも、そのころリーマンショックで景気が悪かったんで、「この予算で帯を埋められるんだったらやっていいよ、半年」って。
(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力:一木俊雄)
※週刊朝日 2022年7月29日号より抜粋