ウクライナから避難してきた人たち。現在、大人や子どももあわせ、1400人超が「避難民」として受け入れられ、様々な支援を受けている
ウクライナから避難してきた人たち。現在、大人や子どももあわせ、1400人超が「避難民」として受け入れられ、様々な支援を受けている
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 ウクライナ避難民に支援がなされる一方、置き去りにされている難民たちがいる。仮放免として暮らし、制限された人権の中で何を思うのか。AERA 2022年7月18-25日合併号の記事を紹介する。

【グラフ】2010年からの難民申請者数と認定数の推移はこちら

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「私たちも難民。それなのに、排除される対象になっているのは、納得できません」

 埼玉県で暮らすトルコ国籍でクルド人のハッサンさん(20)は、思いを吐露する。

「国を持たない世界最大の民族」と言われるクルド人。トルコからシリア、イラク、イランにかけ国境を越え広く暮らしているが、差別や迫害などで多くが故郷を追われている。日本でも、埼玉県川口市や隣接する蕨市を中心に約2千人が暮らす。

 ハッサンさん一家はまず2003年、父親(40代)がトルコ政府からの迫害を逃れ日本に救いを求めて来た。9年後、ハッサンさんは母親(30代)と一緒に来日。日本で生まれた2人の弟を含め家族5人で暮らす。これまでハッサンさんと母親は2回、父親は3回、弟たちは1回、難民申請をしているが認められず仮放免の状態で暮らす。

 仮放免は収容を一時停止されている状態をいう。だが「在留資格」がないため、働くことはできず、国民健康保健に加入することもできず、県境をまたいだ移動の自由すらない。生活保護も、対象が原則「日本国民」なので受給資格がない。在留資格がある親族や支援者からの細々とした援助で、かろうじて食いつないでいるのが現状だ。

■普通に暮らしたい

 ハッサンさんは今、日本で暮らし「永住権」を持つ伯父からの支援を受け都内の大学に通っている。人権について学び、将来は国連で働き国際貢献する夢がある。だが、仮放免のままでは卒業しても就職できない。21年7月、在留資格を求め裁判を起こした。こう訴える。

「ウクライナからの避難民を支援する日本の姿勢はとてもいいこと。だけど、私たちも日本で普通に暮らしたいだけ。それなのに、人権が制限されている。難民認定されず仮放免で暮らす私たちの将来の夢を、あきらめさせないでほしいです」

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