チャットの履歴がハッキングで消された?

 12月中旬に、弘美さんはチャットの履歴を見せてほしいと学校に依頼する。

  すると12月24日にA校長から電話がかかってきて「チャットで悪口が書かれていたのは事実でした。でも、私たちも不思議なんですが、履歴が消えています。書き込んだと認めたA子さんも、『あれ、ない?』と戸惑っていました。誰が消したかわからない、ハッキングにあったかもしれません」と報告があった。

“ハッキング”というと大がかりな事件のようだが、この学校ではIDは出席番号、パスワードは123456789と全員が共通だった。だから、誰でもやろうと思えばA子のアカウントにログインして、チャットの内容を見ることも消すこともできた。

 詩織さんの同級生の男の子はこう証言する。

「11月30日以降、詩織が学校にこなくなってから、なぜ学校に来ないのか、それはA子・B子、C子・D子がいじめていたからだとみんなが噂するようになりました。そのとき、C子・D子の子分みたいな男子の孝(仮名)が、C子とD子のせいじゃないと証明するために、A子のアカウントにログインして、悪口を見つけて僕に見せてきました。そこには『死んでほしい』と書かれていて、ひどいなって思いました」

「加害者の後追い自殺が心配です」

 山根さんの家には、12月になると詩織さんの同級生から「早く学校に来てね」という手紙が届いたり、「なぜ、学校を休んでいるの?」と問い合わせが来るようになった。

 山根夫妻は「子供たちに嘘をつくことがつらい」と感じるようになり、A校長に対し「年明け早々には自殺を公表してほしい」と依頼した。

 するとA校長は「とんでもない。加害者が後追い自殺する危険性があります。後追い自殺って本当にあるので、公表はできません」と断った。山根夫妻が何度頼んでも、「いまの段階では厳しい」と口止めされ、子供たちに嘘をつき続けるしかなかった。当時、子供たちの間では、「山根詩織は不登校になった」と受け止められていたという。

 このあと、学校の隠蔽ともとれる対応は露骨になっていく――。

(森下和海・プレジデントオンライン編集部)

※本記事はプレジデントオンラインからの転載記事です

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