むらおか・ももか/1997年、埼玉県出身。トヨタ自動車所属。4歳のときに病気で下半身麻痺となり車いす生活となる。小学2年時に車いすスポーツの体験イベントで陸上に出合い、小学3年時からチェアスキーを始めた。パラリンピックの2014年ソチ冬季大会で5位。次の平昌冬季大会で金1銀2銅2と出場全種目でメダルを獲得した(写真/写真部・加藤夏子)
むらおか・ももか/1997年、埼玉県出身。トヨタ自動車所属。4歳のときに病気で下半身麻痺となり車いす生活となる。小学2年時に車いすスポーツの体験イベントで陸上に出合い、小学3年時からチェアスキーを始めた。パラリンピックの2014年ソチ冬季大会で5位。次の平昌冬季大会で金1銀2銅2と出場全種目でメダルを獲得した(写真/写真部・加藤夏子)
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 東京パラリンピックは9月1日、陸上の女子100メートル(T54)があり、2018年平昌冬季大会スキーでメダル5個を獲得した村岡桃佳(24)が出場する。冬の女王が語ったAERA2021年7月5日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。

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 パラリンピックの陸上女子代表に内定した村岡桃佳は5月、スイスで行われた国際大会の女子100メートル(車いすT54)で今季世界ランキング3位となる16秒56をマークした。

「最初は出場が目標だったが、上方修正して決勝進出を目指したい」

 2018年平昌冬季大会女子アルペンスキーで金を含むメダル5個を獲得し、翌年に東京大会挑戦を決めた。子どものころ、スキーをする前に打ち込んでいた陸上で出場したいという野心と、冬の女王の重圧からスキーと少し距離を置きたい気持ちとが混在していた。

 岡山に練習拠点を置くワールドアスリートクラブで陸上競技に取り組むことになった。東京を出発する前夜のこと。

「妹の前で行きたくないって号泣して、思い切り引かれました(笑)。極度の人見知りなので新しい環境が怖かった」

 何とかたどり着いたのに、担当コーチから「100メートルを走れる体が何もできてない」と言われた。アップさえついていけず練習を途中リタイア。それでも頑張れたのは冬の女王の意地だろう。2カ月後には日本記録保持者になった。

 1年延期となったため、この冬はスキーと陸上の両立で苦労した。その一方で、2シーズンぶりにスキーに乗って「陸上で鍛えた基礎体力が生かされている」と思わぬ副産物に気づく。離れていたスキーでも、進化を遂げていたのだ。

 夏冬の二刀流挑戦で、心身ともに成長した。夏でも、その笑顔が見たい。

(ライター・島沢優子)

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■陸上競技(車いす)

 障害が軽い選手は正座の姿勢で体勢を低くし、空気抵抗を減らしてスピードを上げる。腹筋が機能しない選手は自力で上半身を起こすことができないため、重心を後ろにした着座姿勢で乗る。直径70センチ以内の後輪からなるレーサーという競技用車いすを用いる。重さは8~10キロ程度で、フレームはアルミニウムやチタン製。

※AERA2021年7月5日号に掲載

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