――岡田は三浦が監督した映画「何者」(16年)に出演した際、三浦の創作姿勢に感銘を受けたという。
岡田:出演シーンはあまり多くなかったんですけど、ここまで掘り下げるかっていうくらい現場でディスカッションして。その時間がすごく楽しかったんです。映画やドラマを撮影していると、時間的にどうしてもあきらめなきゃいけない瞬間が訪れるんですけど、20代の頃はそれがとにかく嫌で。納得していない状態で作品が世に出ていくことが何度かあって、俳優の仕事が嫌いになってしまった時期もありました。
峯田:それはつらいよね。
岡田:でも、「何者」では役としっかり向き合える時間があり、三浦さんとも思いを共有できた気がしたんです。それで、いつかもう一回ご一緒したいと思っていたところに今回の舞台のお話をいただいて。おっ!と思って飛びついちゃったんですけど、先ほどの峯田さんの話を聞いてちょっとヤバいなと思いました(笑)。
峯田:僕は「ボーイズ・オン・ザ・ラン」(10年)という映画で初めて三浦さんと一緒にやらせてもらったんですけど、それ以来よく会うようになって。上の世代の人と同じことをやってもダメだ、じゃあどうしたらいい?とか、2人でそんな話ばかりして、たくさんの時間を過ごしてきたんです。いわば同志みたいなものですね。
岡田:俳優って台本などを与えられてやる仕事ですけど、三浦さんとか峯田さんみたいに膨大なエネルギーを使ってものを作っている方と触れ合ううちに、自分も何かを生み出したいなっていう気持ちが芽生えてきました。
――作中で「自分はこの世界の“主役”か“脇役”か」という問いが繰り返し投げかけられる。エンターテインメントの世界でスポットライトを浴び続けてきた2人は、自分自身をどう思うのだろうか。
峯田:自分のことを主役とは思わないです。そう思っていたらメジャーデビューしていると思うので。むしろ、そういうものに抵抗してみたい。
岡田:僕も思わないです。
峯田:でも、本人が思う自分と、他の人が思う自分は、誰もがどこかしら乖離(かいり)があると思う。僕なんて、ライブの開演10分前にトイレから出られなくなって、泣きながら「俺は峯田だ、俺は峯田だ」って唱えてから毎回ステージに立っている。で、終わったあとにゲロ吐いたりして。バレたらつまらないから、見せないだけで。
岡田:僕も自分の素は見せたくないです。お芝居をしていると見せる必要がないから、やっているのかもしれない。
峯田:ただ、今回は三浦さんの舞台だからね。「俺は裸で書いているんだから、出ている人も裸になってくれ」と思っているはず。あの人は役者を信じていないんです。“人間”を信じている。
岡田:なんか、芝居をするほど、嘘をちゃんとつこうとすればするほど頭がこんがらがってきて。でも、今回の主役って歌舞伎町という場所なんですよね。僕たちは歌舞伎町に踊らされているだけというか。お客さんにはその目撃者になってほしいなと思います。
(編集部・藤井直樹)
※AERA 2021年7月12日号