真夜中の新宿・歌舞伎町を舞台に2人の男の“ドラマチックではない人生”が交錯する。初共演の岡田将生と峯田和伸がAERA 2021年7月12日号で語り合った。
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――舞台「物語なき、この世界。」で初共演する岡田将生と峯田和伸。接点はなさそうに見える2人だが、岡田にとって峯田は特別な存在なのだという。
岡田:中学生のころ、銀杏BOYZの音楽をよく聴いていて、峯田さんは僕の中学時代を彩ってくれた憧れの人なんです。まさか舞台で共演することになるなんて想像していなかったのでびっくりしました。
峯田:僕が岡田君を初めて見たのは、映画「天然コケッコー」(2007年)でした。あの作品が最初だったのかな?
岡田:はい、初めて撮影に臨んだ映画です。
峯田:今もあの時の印象のまんまですね。すごく透明感があって、何も拒絶しない人。岡田君は僕のことをおかしな人だと思っていたかもしれないけど、意外と普通でしょ?
岡田:全然普通じゃないですよ(笑)。ただ、おこがましいですけど、感覚的にはすごく似ている部分もあるのかなと思います。
■芝居通して自分が出る
――岡田が演じるのは、彼女の稼ぎでヒモ生活を送る無名の俳優。そして、売れないミュージシャンを峯田が演じる。自身の役柄についてどう思うか?とたずねると、意外な答えが返ってきた。
峯田:自分と変わらない気がしますね。僕もたばこを吸うし、のんべんだらりと歩くところとか、後輩への言葉遣いとかも自分と重なるんです。
岡田:僕が演じる役は、どうしようもないダメ男なんですけど、隣に峯田さんがいるとなぜか安心するんですよ。ちょっと不思議な感覚です。
峯田:「世界には物語なんて存在しない」ということがひたすら語られる作品だから、演出の三浦大輔さんが役者に求めているのは、芝居のテクニックとかではなくて、役者の中にある“人間”を見せることなんだと思う。
岡田:確かに。役に自分を重ねるというよりは、お芝居を通して自分が表れるというか。
――作・演出を手掛けるのは、センセーショナルな題材とリアリティーに満ちた演出で知られる異才・三浦大輔だ。
峯田:僕は三浦さんの舞台を観るたびにいつも思うことがあって。水槽に土を入れて蟻を飼ったら、数日すると部屋をいくつか作って通路を移動しているでしょ? そういう蟻たちの動きをずっと観察している感じ。
岡田:なんか、わかります(笑)。
峯田:普通の舞台だと役者のエゴが出るじゃないですか。「あそこのシーンでこう動きたい」とかね。でも三浦さんにとって役者のエゴは邪魔でしかなくて、お客さんに見せたいのは“生態”なんですよね。蟻の行為には物語や意味が一切ない。ただ腹が減ったから地上に出てエサを探して、女王蟻のために栄養を持って帰る。そんなお芝居ができたら、三浦さんの舞台は完成するのかなって思います。