■腟は女性の心身を整えるパーツ
まず、腟についておさらいをしておきましょう。腟は腟口から子宮までをつなぐ筋肉でできた管のような器官。その筋肉を粘膜が覆い、粘液を分泌しています。健康な腟は粘液でうるおい、筋肉が柔らかくて伸縮性に優れています。
腟の直径は2~3センチメートルですが、出産時には大きく広がり、直径10センチメートルもの胎児の頭が通過します。しかし近年では腟まわりが萎縮していたり、冷えていたりする女性が増え、腟が広がりにくいために赤ちゃんが出るまで時間がかかる、会陰切開になるなどのケースが少なくないようです。
また、腟は男性器を受け入れる器官でもあります。腟が伸縮性を失うと、性交痛の原因となってしまいます。
■40歳を過ぎたら腟ケアは必須
腟の萎縮や冷え、乾燥の原因には、過剰なストレスや生活習慣の乱れ、冷え症、加齢などが挙げられます。現代女性はどれか1つは当てはまるのではないでしょうか。たつの先生に少し詳しく教えていただきましょう。
「腟には末梢神経や毛細血管が密集しています。脳とは迷走神経系を経由してつながっているとされ、ストレスなどで自律神経が乱れると、腟まわりも萎縮。同様に、毛細血管が多く通っているので、冷えて血流が悪くなると、腟も冷えてしまいます。さらに腟は子宮とつながっているので、女性ホルモンが減少すると腟の粘膜は薄くなり、粘液の分泌が低下。40歳以降、腟は乾燥しやすくなるのです」
ちなみに、セックスレスは腟の萎縮による性交痛が原因になっている場合も。腟ケアはセックスレスの予防にも役立つといえます。
「でも、実際のところ、腟の問題に関しては、西洋医学の視点だけで話すのには限界があるのです」とたつの先生。そこで役立っているのが、鍼灸師でもある先生が学んできた東洋医学の教えだと言います。
「東洋医学では、血管、神経、リンパ管の他に、目には見えない気(エネルギー)が流れる経絡があると考えられています。経絡のうち督脈は会陰から背中側に通じる道。背中には自律神経が走っています。経絡で見れば、会陰と自律神経が関係し合っているのは明らかなのです」
腟ケアは自律神経やホルモン、血流だけでなく、心にも働きかけるそう。これも東洋医学の考え方になりますが、臓器と感情には関連があり、腟を温めると、イライラした気持ちや孤独感が解消され、頭をスッキリさせるのにも有効だそうです。皆さんも、心身のセルフケアに腟ケアを役立ててみませんか。
>>【後編】「膣ケア」実践編 助産師が教えるオイルケアで細胞から若返る へ続く
<監修者>
監修/たつのゆりこ先生
1960年生まれ。大学病院(産科・新生児・ICU/CCU)から助産院、自宅出産介助まで幅広い業務経験をもち、東洋医学、アーユルヴェーダの知識を活かして活躍。現在、「Be born 助産院・産後養生院」院長として、お産の介助、出産前後や更年期女性の心身のケアを行っているだけでなく、「伝統医学応用研究所」を立ち上げ、女性の心と体についての勉強会なども開催している。