
製法の難しさゆえに完成させるまでには時間がかかる。だが、その代わり、この味噌ラーメンには圧倒的なアドバンテージがある。流行に左右されない味なのだ。長年この製法を貫きながら、スランプに陥ることなく「すみれ」は味噌ラーメン界のトップを走り続ける。
「福籠」のラーメンの作り方は「すみれ」とほぼ同じだが、老舗製麺所である浅草開化楼製のモチモチとした麺を採用し、本場の札幌味噌ラーメンとはまた一味違う個性を演出している。開店当初こそ売り上げがどん底だったが、一度伸び始めてからは、安定した人気を保っている。宣伝に頼ることなく、ラーメンの味と口コミだけでここまで伸ばしてきたというのだからすごい。
「コロナで1度目の緊急事態宣言中は休業をしていたのですが、常連さんが『禁断症状が出た』とかでお店を何度ものぞきに来てくれたんです。それだけうちのラーメンを愛してくれているのは本当にうれしいことだなと思いました」(畑谷さん)

そんな畑谷さんの愛する一杯は、同じく東京・浅草橋を支える人気店の豚白湯ラーメン。開業の時期もほぼ同じで、切磋琢磨(せっさたくま)しながら街を盛り上げているという。
■「豚骨のくせにパンチないじゃん」を逆手に… 原価率約6割のラーメン店の挑戦
浅草橋にある「麺 ろく月」。「福籠」とは駅を挟んで逆側にあるが、同じ13年オープンの店だ。店主の湯田達巳さんが脱サラして開業。化学調味料を使わずに仕上げた「豚白湯らーめん」を提供していて、色鮮やかで上品な一杯には多くのファンがいる。
湯田さんは福島県出身で、高校を卒業して上京。佐川急便に就職し、18歳から配達の仕事をしていた。浅草橋エリアを担当していたという。

これからの生き方を考えたいと20代半ばで退職したある日、テレビで「大和製作所」という製麺機メーカーがラーメン学校を設立したというVTRを見て、ラーメン屋をやろうと決意する。ちょうどラーメンブームが到来していた2000年代前半は脱サラして開業した例も多く、自分にもやれるのではないかと考えたのだという。