これらの結果を踏まえ、消費者庁は賞味期限切れの食品について「食べきる目安となる期限」を設定することにしました。
賞味期限は、メーカーが品質をベストで保持できると検査などで確認した期間に一般に、安全係数として0.8以上をかけ算して決めています。1以下の安全係数をかけ算することで期限を短くし、安全や品質に万全を期すのです。
そこで、消費者庁では賞味期限切れ後の食べきる目安として、次のような式を設定しました(【図表3】)。
賞味期限後の食べきる目安(月数)=賞味期限(月数)×1/10×1/2
多くの食品メーカーは安全係数として0.8を採用していますが、場合によっては0.9を用いることもあるようです。そのため、安全係数が0.9であると想定し、賞味期限(月数)に0.1(=10分の1)をかけ算します。これにより、品質を保持できている、ということをメーカーが確認している期間をおおまかに算出できます。さらに、念のため2分の1をかけ算して半分の期間としました。
災害用食品の賞味期限が3年なら、食べきる目安は3年(=36カ月)×10分の1×2分の1=1.8カ月となりおよそ2カ月。5年(=60カ月)なら、食べきる目安は3カ月です。
●国が、寄付のルールを申し合わせ
これを受け、国は4月21日、災害用備蓄食品の有効活用についての「申し合わせ」を公表しました。
賞味期限までの期限がおおむね2カ月以内の食品については、売払い手続きを経ずに、フードバンク団体や子ども食堂等に対して無償提供、寄付できる、というルールにしました。さらに、消費者庁が考えた「安心して食べきる目安となる期限」も併せて伝えることにしました。これにより、団体は2カ月+2~3カ月の間は、安全に提供できるようになりました。
さらに、各府省庁からどのようなスケジュールで備蓄食品が出てくるか、農水省がポータルサイトで情報を公開します。フードバンク団体などはスムーズに準備し申込みをしたり、利用者への提供メニューなどを考えたりできるようになります。
●「3カ月は大丈夫」は、備蓄食品限定
ただし、食品ロス削減推進室の堀部課長補佐は「この考え方と、2カ月とか3カ月という数字は、中央府省庁の備蓄食品限定です」と強調します。一般的な食品に簡単に適用することはできません。箱に詰められ直射日光も受けず、府省庁の一室で5年間保管されてきたからこそ、の話なのです。
長期保存用食品であるのも大きなポイント。長期保存用食品は、メーカーが微生物管理に細心の注意を払い質の高い容器包装材を用いて製品化されています。だから、長く保つし高価です。
製造して5年もたったものが3カ月も大丈夫なのであれば、普通の食品ならもっと長く……と考えがちですが、実際には逆。普通の食品の衛生管理や容器包装は、多くがそれなり、です。保管条件もまちまち。複雑な流通段階を経て店頭に長く並び、日光や蛍光灯に照らされて、という食品もあります。
加えて、わが家の賞味期限切れ食品、「直射日光・高温多湿は避けて」と書いてあるのに、日が当たっていたりコンロの近くに置いていたり、ではありませんか?
堀部課長補佐は、「もったいないという気持ちはとても大事です。でも、食品ロス対策は科学的に行うべき。安全をおろそかにした食品ロス対策はあり得ません」と話します。