王室人気が高く、王室がSNSを積極的に使うノルウェーならではの手段で、日本とは感覚は違うように思えるだろう。だが、眞子さまと小室さん問題の対応では感じることができず、ノルウェー王室には感じられたものがある。
「国民に対する誠実さであり、正直さでしょう」
こう話すのは、象徴天皇制を研究する河西秀哉・名古屋大准教授(歴史学)だ。
「たしかに、欧州王室と日本の皇室は前提が異なる部分があり、単純に比較はできません。またノルウェー王族のふるまいも、日本では想像できないほど破天荒です。しかし、メッテ妃もルイーセ王女の件でも一貫しているのは、国民に向き合う正直さ。そして、過ちがあれば素直に認め、理解してもらおうと努力を続ける姿勢です」
必ずしも、計算がないとはいえない。だが、戦争と外交に明け暮れた歴史を持つ欧州王室が、駆け引きに長けているのは当然だ。
「メッテ妃の記者会見も一世一代の大勝負であり、人生をかけた大舞台であった。ルイーセ王女が、SNSを通じた謝罪やけじめのつけ方は、『軽い』というより、最も国民感情に訴える方法だと判断したのでしょう。日本の場合、ロイヤルに求める品位や節度、伝統への思いはさらに強い。そうした、皇室に敬愛を持つ人びとの存在が皇室を守ってきたのだと思います」(河西さん)
眞子さまと小室さんの結婚問題では国民とのズレを埋めるべく、宮内庁長官ら幹部がハンドリングを試みたものの空回りに終わった。ふたりは、天皇と秋篠宮さまから、トラブルを抱える恋人との結婚について、「国民の納得と祝福」という条件を課された。
「問題は小室さんの世代には、そうした日本人が大切にしている常識や完成が通じないという点です。民間のセレブと同じように、『理解して貰わなくてもいい』という姿勢が透けて見える限り、人びとが祝福をするのは難しいでしょう」(河西さん)
皇室や宮内庁が国民に向き合い、双方を隔てるカーテンを開けることはできるのだろうか。
(AERAdot.編集部 永井貴子)