気象庁「震度データベース検索」で調査(AERA6月7日号から)
気象庁「震度データベース検索」で調査(AERA6月7日号から)

「火山灰は送電線に積もりショートさせるので、各地で停電し、断水の恐れもあります。数ミリの降灰で車は運転できなくなるので高速道路は通行止めとなり、鉄道も首都圏全域でほぼストップ。羽田や成田空港も飛行機が離着陸できなくなり滑走路は閉鎖され、農業にも甚大なダメージを与えます」

巨大地震が「噴火」誘発

 人口や産業が集中した首都圏が被害に見舞われれば、影響は甚大だ。02年に内閣府が出した富士山噴火による被害額は、最大で2兆5千億円。だが多くの専門家は、試算額は被害を過小評価していて、想定外の被害も考えられ経済損失はより大きくなると指摘する。

 懸念材料はまだある。

 鎌田名誉教授によると、富士山噴火は南海トラフ巨大地震と密接な関係があり、この二つが「連動」する可能性があるという。南海トラフ巨大地震は、2030~40年のどこかで発生するとされる巨大地震だ。

「巨大地震が富士山噴火を誘発した例は過去にもあります。1707年に南海トラフでM8.6とされる巨大な宝永地震が起きましたが、その49日後に起きたのが宝永噴火でした」

 もし、南海トラフ巨大地震と富士山噴火が連動したらどうなるのか。国が試算するこの巨大地震による被害総額は約220兆円。これに富士山噴火の被害が加算されれば、とてつもない被害額となることが予想される。鎌田名誉教授が言う。

「南海トラフ巨大地震では、東京から九州まで日本の人口の約半分にあたる6千万人が被災します。そこに富士山の噴火が追い打ちをかければ、日本の政治経済を根底から揺るがすことになります。国家の危機管理上、平時のうちに可能な限り予測し、減災に向けて全力で取り組むべきです」

 未来を正確に予測することは誰にもできない。そうであるからこそ、過去に学び、荒ぶる自然を正しく恐れ、これからの災害に備えたい

(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年6月7日号

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