小説の世界観を、絵とショコラで体験するアートイベント「光合成しちゃう?」が、5月27日(木)から東京・門前仲町のHYPERMIXで始まる。
【イベント「光合成しちゃう?」に出品される瀬川祐美子さんの作品などはこちら】
『目覚めよと人魚は歌う』(三島由紀夫賞)や『俺俺』(大江健三郎賞)など、数々の文学賞を受賞してきた作家・星野智幸さんが、10年以上にわたって書いてきた植物の小説ばかり11編を収録した短編集『植物忌』(朝日新聞出版)。その装幀画を手掛けた画家の瀬川祐美子さんは、ヨーロッパでも学んだ注目の若手アーティストだ。今回、ヒトが植物に溶け出すような不思議な世界観を描き出してくれた。さらにその世界観をショコラで表現しているのが、女性誌などでも注目されているショコラティエ・山崎のり子さんだ。
会場には瀬川さんの新作油彩画など13点を展示。「五感で取り込んだものを色にする」という抽象度の高い色彩表現にあふれた瀬川さんの作品を、ショコラを味わいながら鑑賞していくという体験型のアートイベントだ。ショコラは山崎さんがこのイベントのためだけに創作した。
瀬川さんと山崎さんのコラボ展は2019年に始まって、今回で2回目になる。そのきっかけは山崎のり子さんの「この絵を食べたらどんな味?」というひと言だった。アート鑑賞にショコラを加えることで、自然に味覚や嗅覚など五感が刺激されていき、作品の理解や味わいも深まるのではないかと企画した。
実際にコラボ展を訪れた人からは「色の見え方が違った」「今まで見えてなかった線が見えてきた」「イメージが広がってその絵の中に入り込んでいくのがわかった」など、より深く作品を鑑賞できたという声が寄せられ、二人とも手ごたえを感じたという。
過去のイベントでは瀬川さんの作品からインスパイアされて山崎さんがショコラをデザインしてきたが、今回は『植物忌』から二人がそれぞれ発想を広げて作品として表現している。
瀬川さんは『植物忌』の11編を1点ずつ油彩画にし、さらに小説集全体をイメージした作品と装幀画をシルクスクリーンにした計13点をそろえた。瀬川さんは同作について、「フィクションでありファンタジーですが、まるで自分の気持ちを言い当てられているような気がしました」と言う。
「描かれている世界観には怖さを感じるところもありますが、同時にどこかで言ってほしかった、見てみたいと思っていた景色でもあり、相反する感情がわき上がりました。なので、小説のワンシーンを説明したりトリミングしたりした『挿絵』のようになるのは避けたかった。作品を読んで思ったことや、言葉では見ることができない色や形を自分の表現で伝えられるように心がけました」(瀬川さん)