「これを言っていいのか分かりませんが」と少しためらいながら、佐々木さんはこう続けた。

「安倍元首相付きの警視庁のSPはかなり訓練されています。テレビ映像を見ていても彼の動きは訓練されたSPだと一目で分かります。一方、奈良県警の私服警官はおそらく横一列に並んで全員が前面監視に当たっていたように見えます。急きょ集められたのかなと思うぐらい、SPとしての動きではなかった」

 今回、2発目の発砲が安倍元首相の致命傷になったことがうかがえる。1発目が発砲された時点で取り押さえることはできなかったのか。これについて佐々木さんは「1発目どころか、手荷物から(凶器を)取り出した時点で抑えにかかるのが常道です」と話す。

「結果論に聞こえるかもしれませんが、ガムテープを巻いた、人目に付く手荷物を持つ人物がいれば、通常はマークして行動注視します。首都圏であれば無線で『注視しろ』という指示が出ます。この指示が出ていれば、黙って容疑者の前に立ち、行動を注視しますが、今回そうした動きは全くなかった。連携が取れていない。慣れていないという印象は否めません」

 要人が訪れる機会の少ない地方で起きた事件だったことが、警備態勢の穴につながったというわけだ。

 8日午後、報道各社に状況や対応を説明した警察庁幹部は、現場での警備について「どういう警備態勢があったかについてしっかり確認していく必要がある。それが十分だったか十分検証していく必要がある」と述べたという。

(編集部・渡辺豪)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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