「ネガ写真っぽくない」って言われるのはすごく嫌
そこで頭に思い浮かんだのがあの西村カメラだった。
「なんだ、うちの近くにラボがあるみたいなものじゃないか、と思って。で、プリントしてもらったら、結果がよかったんですよ」
西村カメラがあったからこそ、「イメージどおりにプリントが上がってくれば、自分でやらなくてもOKじゃないか」と、方向転換できた。カラーネガで撮り続けるモチベーションを保ち続けることができた。だから、その出合いはとても大きかったと、赤城さんは振り返る。
自分のイメージどおりに仕上げてもらうため、プリントを依頼する際には「ハイライトの調子を全部出してほしい」と、指示を出す。
「シャドーはつぶれちゃいますけど、って言われるんだけど、それはいいんだと」
――そうすると、ポジ写真っぽい仕上がりになりますね。
「でしょう。でも、かっちりしたプリントをつくると、見た人から『ネガっぽくない』って言われることがある。それがすごく嫌で。いま、カラーネガって、ちょっとしたブームじゃない。いわゆる『ゆるふわ』の写りのやつ。あれが嫌いなんだよ」
まあ、赤城さんの好みは別として、ネガカラーで写せば、「ゆるふわ」にも、「ポジっぽく」も仕上げられるわけだ。
「そういうことを考えると、ネガカラーはなかなか特別な位置にある。銀塩写真の厚み、光を積み上げていくような感じも確実にあって、面白いんですよ」
ロクロクは「カメラそのものが見ている」感じがする
そんなカラーネガのよさを気づかせてくれたのはシノゴだったが、大判カメラだけに、気軽に撮る、というわけにはいかない。
一方、「35ミリ判だと、もの足りない。だったら、中判がいいんじゃないかと思って。で、いろいろカメラをとっかえひっかえして、いちばんぴたっとハマったのがロクロクの真四角の画面だった」
ちなみに、同じ中判でもロクナナは「業務用」で、作品づくりのモチベーションが湧かなかったという。
――35ミリ判と比べて、6×6判で撮る面白さは、どこにあるんですか?
「うーん、なんていうかな、枷をはめるというか、自分を自分で規制をする楽しさ。35ミリ判、特にライカだと『視線の延長』みたいな感じがある、っていうじゃない。それに対してロクロクは『カメラそのものが見ている』感じがする。あと、真四角に区切った、別な世界が生まれる感じもある。そこが気に入ったんだよ」
その撮り方はとてもシンプルだ。
「とにかく、見たいものを真ん中に置いて、ばしっと撮る。真四角の画面って、それでOKなんです」
以前から6×6判の画面が好きだった。しかし、仕事ではあまり使わなかった。きっちり撮ると、「これじゃ、切れねえじゃねえか!」と、デザイナーから怒られた。トリミングして縦位置でも横位置でも使えるようにするには少し引いて撮る必要があった。「そうすると、弱いんだよ。写真が」。そんな不満が長年あった。
「真四角の画面を思いっ切り生かして、その中に世界を閉じ込める、というのをずっとやりたかったんですよ」
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】赤城耕一「録々」
オリンパスギャラリー東京 12月18日~12月25日