![撮影:赤城耕一](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/840mw/img_2d8fdcf4c11d79d11ad0029029032fb3186524.jpg)
写真家・赤城耕一さんの作品展「録々」が12月18日から東京・新宿のオリンパスギャラリー東京で開催される。赤城さんに聞いた。
今回、インタビューを行ったのは西武新宿線、東伏見駅近くの喫茶店。
改札口で待ち合わせ、駅を出ると、赤城さんは「あれが西村カメラさん」と言って、ロータリーの向こうに見える大きな看板の写真店を指さした。(ああ、これがあの店か)。ファンの多い評判の店なので、私も名前だけは知っていた。しかし、そのすぐ後、「長い話になるんだけど」と前置きされ、この店との出合いから始まった10年にわたる作品づくりの話を聞かされることになるとは、思いもよらなかった。
![撮影:赤城耕一](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/b/840mw/img_3b48e54a144b68384fd236d424ecd314105424.jpg)
何かを追求しようとか、そういう気持ちはまったくない
赤城さんの作品展は2005年の「気表(かお)」以来、15年ぶり。
前回は有名俳優から職人、市井の人々まで、約20年間にわたり撮影したポートレートのモノクロ写真を展示した。
で、今回はというと、「被写体にあまり強い意味はない」と言う。「何かを知らしめようとか、何かを追求しようとか、そういう気持ちはまったくない」。つまり、前回とは正反対の内容の写真展なのだ。
「だから、作品を見た人から『これはいったい何ですか?』って、言われたらうれしいですね。例えば、人だったら、周囲の状況を含めてその人の面白さをとらえたのであって、その人が誰である、ということはぜんぜん関係ない。まあ、われわれの世界は謎に満ち溢れているんですよ。何だかわからないって、好きですね」
そう言うと、「ふふっ」と笑い、目じりをゆるませた。
作品に写るのは青空を背景に銀色に光る貯水タンク、窓ぎわに置かれた小さなゾウの置物、スーツケースに物干し竿をくくりつけたおじさん、古びた物置小屋、うつむき加減で歩く子どもたち……。
人がいれば、モノもある。真新しいものがあれば、古びたものもある。撮影場所もバラバラで、何の脈絡もない。
ところが、不思議なことに作品のつながりには違和感がない。ほどよく肩の力が抜けているというか、画面の中から心地よい風が吹いてくるような気がした。そんな感想を赤城さんに伝えると、「初めて言われたよ」と、微笑んだ。
![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/120m/img_00d645db1ab63d9762e933213f2dc74c106891.jpg)